求人企業から年収の35%を受け取る契約書を作り、候補者を紹介してから許可申請を考える。自社は「採用コンサルティング」だから職業紹介ではない、と説明する。この順番では、サービス名より先に、求人と求職の申込みを受け、雇用成立をあっせんした実態が問われます。
職業紹介は、求人と求職の申込みを受け、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんすることです。有料で行う事業は厚生労働大臣の許可が必要です。求人広告、募集情報等提供、採用代行、コンサルティングと隣接しますが、候補者の選別・推奨や意思疎通へどこまで関与するかで境界が変わります。
人材紹介事業の開始日は法人設立日でもサイト公開日でもありません。候補者を企業へ推薦する前に、事業の実態を区分し、許可、責任者、財産、手数料、情報管理を稼働させます。
本記事は2026年9月8日に、厚生労働省の制度概要、許可・更新マニュアル、2026年7月31日適用の業務運営要領、職業安定法施行規則、指針、労働局の許可要件、人材サービス総合サイト案内を確認しました。個別申請は事前に主たる事務所を管轄する都道府県労働局へ相談してください。
サービス名でなく実際の関与から許可要否を決める
紹介行為を工程ごとに判定します。
求人広告は、求人情報を掲載し、応募者が自ら企業へ連絡する形が中心です。職業紹介は、事業者が求人・求職の申込みを受け、双方の条件を照合し、雇用成立をあっせんします。AI推薦やスカウト機能があっても、名称だけで自動判定できません。
システムが候補者を順位付けし、事業者が特定企業へ応募を勧め、連絡内容を調整し、面接や条件交渉へ関与するほど職業紹介性が高まります。単に連絡先を表示する場合でも、運営者の判断や加工の実態を図にします。
業務フローを、求人申込み、求職申込み、情報収集、検索、推奨、応募意思、推薦、面接調整、条件提示、内定、入社、請求に分け、各工程で誰が判断するかを労働局へ示します。プロダクト仕様が変われば再判定します。
「プラットフォーム」「RPO」「AIマッチング」という呼び方は許可判定を決めません。求人者と求職者の間へ入り、雇用成立をあっせんする実態を工程ごとに見ます。
取扱職業と地域を事業計画の最初に絞る
説明できる市場から始めます。
有料職業紹介は原則として幅広い職業を扱えますが、港湾運送業務と建設業務に就く職業は対象外です。建設会社の経理職と建設現場の作業職を「建設業界」と一括にせず、実際の職務から区分します。
許可申請では取扱職種・地域など業務範囲を定めます。最初から全国・全職種と書けば市場が広がるわけではありません。担当者が労働条件、資格、賃金相場、採用リスクを説明できる範囲へ絞ります。
国外にわたる紹介では相手国の法令、送出機関、在留資格、手数料、個人情報移転など追加確認が必要です。国内許可があるだけで、海外パートナーの行為まで適法・適正になるわけではありません。
財産要件は資本金の額だけで判定しない
基準資産と現預金を別々に計算します。
主な基準は、資産総額から繰延資産・営業権と負債総額を控除した基準資産額が500万円×事業所数以上であることです。加えて、自己名義の現金・預金が150万円+60万円×(事業所数−1)以上必要です。
一事業所なら基準資産500万円以上と現預金150万円以上、三事業所なら基準資産1,500万円以上と現預金270万円以上が目安になります。資本金500万円でも赤字や借入により基準資産が不足することがあり、逆に資本金だけを増やしても現預金要件を満たすとは限りません。
決算直前の残高移動で一時的に数字を作るのではなく、許可後も求職者情報、苦情、返戻、給与前払い等を安定して運用できる資金計画を作ります。複数事業所を後から増やす時も財産要件を再計算します。
一事業所の許可基準は「資本金500万円」ではありません。基準資産500万円以上と、自己名義の現金・預金150万円以上という別の二本を満たします。
財産、事業所、責任者、申請費用を同じ開業工程で確認します。
職業紹介責任者は名義でなく現場を統括する
不正確な求人を止める権限を持たせます。
各事業所に職業紹介責任者を置きます。成年後3年以上の職業経験、欠格事由、講習などの要件を確認し、許可申請では受理日前5年以内の講習修了が必要です。複数事業所の兼任には条件があるため、距離、従事者数、常駐性、連絡体制を確認します。
責任者の仕事は許可証を壁へ掲示することではありません。求人・求職申込み、労働条件明示、個人情報、手数料、苦情、管理簿、従業者教育を統括します。営業目標だけを持つ責任者では、不利な求人条件を止めにくくなります。
求人企業が固定残業、勤務地、業務変更範囲を曖昧にした場合、掲載・推薦を止められる権限を与えます。責任者不在時の代行、重大苦情の経営報告、行政照会への記録提出も手順化します。
新規3年、更新5年から逆算する
許可期限と講習・決算を一つの暦で管理します。
有料職業紹介の新規許可の有効期間は3年、更新後は5年が基本です。更新申請には期限があり、直前に責任者講習や財産要件の不足が判明すると事業継続へ影響します。
許可日、満了日、更新申請期限、責任者講習日、決算確定日、事業報告期限を年間カレンダーへ入れます。住所、代表者、役員、事業所、責任者、取扱範囲、手数料を変更する時の届出・書換も別に管理します。
許可申請手数料は一事業所の場合5万円の収入印紙が基本で、複数事業所は追加額があります。登録免許税なども必要です。行政費用だけでなく、事務所、鍵付き保管、責任者講習、システム、保険、法務、監査を開業費へ入れます。
手数料表は売上計算式と請求時点を一致させる
年収、採用、入社の定義を揃えます。
有料職業紹介の手数料には、法定上限制と届出制があります。実務で多い成功報酬型でも、届出た手数料表、求人企業との契約、請求書の計算が一致しなければなりません。
「理論年収35%」と書くなら、理論年収に基本給、固定残業、賞与、手当をどこまで含むか、入社日、試用期間、年俸変更、短時間勤務、内定後辞退を定義します。消費税、最低手数料、着手金、求人受付手数料、再紹介の扱いも示します。
求職者からの手数料徴収は原則禁止で、例外的に認められる職業・条件があります。求職者向け研修や履歴書支援を別商品と呼んでも、紹介の過程で必ず受けさせるなら手数料規制との関係を確認します。
紹介料率より揉めやすいのは計算の母数と発生日です。「年収」「採用」「入社」の定義を契約、手数料表、請求システムで同じにします。
返戻金は営業値引きでなく期待差の調整である
返金と再発防止を同時に行います。
紹介した人が早期退職した場合に手数料の一部を返す返戻金制度は、期間、退職理由、返戻割合、申請期限、相殺、例外を明示します。「1か月以内80%、3か月以内50%」などの数字は各社の制度であり、法が全国一律に決めた割合ではありません。
本人都合、解雇、会社都合、採用条件相違、死亡、事業譲渡、試用期間不合格をどう扱うかを書きます。求人企業の不正確な条件やハラスメントが原因でも自動的に同じ返戻とするか、事実確認の手順を決めます。
返戻金を支払って終えると、同じミスマッチが繰り返されます。退職理由を本人の同意と秘密に配慮して確認し、求人票、推薦理由、面接、条件通知のどこで期待差が生まれたかを分類します。
返金計算と同時に、求人条件と推薦説明のどこで期待差が生じたかを振り返ります。
手数料・返戻金・運営規程を見つけやすく公開する
公開情報と実際の請求を同じ版にします。
2024年4月から、事業所内の掲示に代えて、自社ホームページなどでも手数料表、返戻金制度、業務運営規程を情報提供できるようになりました。利用企業がサービス利用時に必ず参照するページなど、見つけやすい場所へ置きます。
自社サイトに載せても、人材サービス総合サイト上の手数料表・返戻金制度の情報提供は引き続き必要です。ページURLだけ登録して404、ログイン必須、古いPDFという状態を避け、変更ごとに差し替えます。
営業資料の料率と公開手数料表が違う場合、キャンペーン割引や個別契約の根拠を確認します。公開日、改訂日、適用契約、旧版を保管し、既存顧客へ変更を通知します。
情報公開は許可申請時の飾りではありません。営業が提示する価格、契約書、請求、返戻計算、人材サービス総合サイトを同じ版に保ちます。
求人票は企業の言葉をそのまま転記しない
労働条件を候補者が判断できる具体性へします。
求人申込みでは、業務内容、契約期間、試用期間、就業場所、勤務時間、休憩、休日、時間外、賃金、社会保険、受動喫煙、募集者、変更範囲など法令上の明示事項を確認します。企業の採用ページからコピーするだけでは不足や古い条件を見落とします。
固定残業代は対象時間、金額、超過分支給を分けます。「みなし残業込み」という一語で推薦しません。入社後の業務・勤務地変更範囲が広い場合は、候補者が自分の生活と照合できる具体性へします。
求人条件が途中で変わったら、変更前に応募した候補者へ差分を明示します。高い年収だけを検索結果へ表示し、実際の下限や条件を面接後に出す運用は止めます。
個人情報は推薦のために必要な範囲へ絞る
推薦先と共有項目を本人の意思で管理します。
求職者の履歴書、職務経歴、年収、評価、退職理由、健康、家族事情は機微性が高い情報です。紹介先が決まる前に無関係な企業へ候補者情報を一斉送信しません。推薦先、共有項目、時期について本人の意思を確認します。
企業から不採用理由を得ても、差別的・不正確な評価を他社推薦へ流用しません。閲覧権限、ダウンロード、メール添付、委託、保存期間、削除、事故時連絡を規程とシステムで一致させます。
採用候補者へのハラスメント防止では、応募者を守る企業側の体制を扱っています。紹介会社も、面談や会食での不適切行為を受け付け、求人企業へ是正を求める窓口を持ちます。
管理簿と事業報告を後から作らない
案件IDで紹介から返戻まで追跡します。
求人管理簿、求職管理簿、手数料管理簿は、申込み、紹介、採否、手数料を日々記録します。年度末にCRMから推測して埋めると、紹介日、就職日、離職、返戻との対応が崩れます。
一つの求人ID・求職者ID・紹介IDで、条件版、本人同意、推薦、面接、採否、入社、請求、返戻を結びます。削除要求があっても、法定保存が必要な記録と営業利用停止を分けます。
事業報告の集計は、求人・求職・就職件数だけでなく、離職状況等の情報提供につながります。担当者ごとに定義が変わらないよう、内定、就職、紹介、自己応募、重複候補をデータ辞書で定めます。
採用成立より説明の一致と定着を測る
売上以外の品質指標を担当評価へ入れます。
売上だけを追うと、応募意思が弱い候補者を急かす、求人の不利な条件を後回しにする、入社後の苦情を返戻処理だけで閉じる誘因が生まれます。担当者評価に、条件正確性、本人同意、苦情、定着、求人企業の是正を入れます。
人材派遣と人材紹介の違いを利用企業が読む場合、雇用主と指揮命令の差が中心です。本記事では紹介事業者側の許可・運営を扱い、検索意図を分けています。
早期離職は30日、90日、180日など期間別に見ます。本人責任と決めつけず、仕事内容、上司、労働時間、賃金、勤務地、選考説明の差を分析し、同じ求人の推薦停止条件を設定します。
事業の品質は「何人入社させたか」だけでなく、求人条件と本人の理解が一致し、無理な勧奨なく選び、入社後も説明どおりだったかで測ります。
許可前90日で運営を一巡させる
架空案件で申込みから削除まで試します。
90日前にサービス工程と許可要否、取扱職種・地域、事業所を決め、労働局へ事前相談します。財産要件、役員欠格、事務所、責任者候補を確認します。
60日前に責任者講習、申請書類、手数料表、返戻金制度、業務運営規程、個人情報規程、苦情手順、システム権限を整えます。30日前に架空の求人・求職で、申込みから紹介、条件変更、採否、請求、返戻、削除までを模擬します。
許可後も、最初の実案件を特例扱いしません。営業が契約を急いでも、求人条件、手数料版、本人同意、推薦記録が揃わなければ送らないゲートを置きます。
制度変更で外国人材など新しい受入れ枠を扱う場合は、許可の範囲、在留資格、送出し・支援機関との役割を案件開始前に確認します。育成就労制度へ向けた受入れ準備のように施行前後で条件が動くテーマを、通常求人と同じ説明資料で扱いません。確認日と根拠資料を求人IDへ残します。
事業をやめる時の出口も許可前に設計します。進行中の選考、求職者データ、求人企業への請求、返戻、苦情、法定帳簿を誰が引き継ぐかを決め、営業停止後も本人が訂正・削除の連絡先へ到達できるようにします。顧客リストだけ売却し、同意と説明責任を切り離す撤退は選びません。
参考情報
許可、財産、手数料、運営を支える公式資料です。
以下は2026年9月8日に内容と到達性を確認した一次情報です。
よくある質問
気になる質問を開くと、本文の重要点を短く確認できます。
Q求人サイトを作るだけでも有料職業紹介の許可が必要ですか?
A情報を掲載するだけか、求人・求職の申込みを受けて選別、推奨、連絡調整を行うかで変わります。名称ではなく業務フローを図にして労働局へ事前相談します。
Q資本金500万円なら財産要件を満たしますか?
A資本金だけでは判定しません。基準資産額が500万円×事業所数以上であることと、自己名義の現金・預金が150万円+60万円×(事業所数−1)以上であることを別々に確認します。
Q紹介手数料35%は法律で決まった相場ですか?
A法律が35%を一律に定めているわけではありません。上限制・届出制と自社の手数料表を確認し、年収の算定範囲、発生時点、税、返戻を契約で定義します。
Q早期退職なら必ず紹介料を全額返金しますか?
A返戻割合は自社が明示した制度と契約によります。期間、退職理由、例外、申請期限を事前に示し、返金後は求人条件と推薦説明の期待差を分析します。
Q職業紹介責任者は複数の事業所を兼任できますか?
A一定の条件で兼任できる制度がありますが、事業所間の距離、従事者数、常駐性、連絡、実際の統括能力を確認します。申請前に労働局へ相談してください。
Q手数料表は自社サイトだけに載せればよいですか?
A自社サイト等での情報提供が認められていますが、人材サービス総合サイト上の手数料表・返戻金制度の情報提供も引き続き必要です。変更ごとに両方を更新します。