冷蔵庫を月2万3,000円で使えるなら、120万円で買うより楽に見えます。しかし5年契約の機器を入れて2年で店を閉めると、使わない残り3年の支払が残ることがあります。厨房機器の比較で最初に決めたいのは月額予算ではなく、「この場所で、何年、どの料理を売るか」です。
一店舗目で客数を見極めたい店、期間限定の出店、10年以上使う自社物件では、同じ冷蔵庫でも合理的な調達方法が違います。新品をリースするか中古を買うかという二択にせず、短期レンタル、機器ごとの組合せ、故障時に別店舗から融通できるかまで考える余地があります。
厨房機器は、開店日の支払額と閉店日の支払額を一組で比較します。途中で返せると思っていた機器に残リース料があると、撤退資金が足りなくなります。
以下は小規模飲食店の冷蔵庫・製氷機を中心に、2026年9月5日に確認した業界団体、メーカー、環境省の資料で整理したものです。金額は編集部が条件を置いた計算例で、市場相場や特定商品の見積ではありません。税務・会計処理、融資条件は含めず、実際の契約と別に確認してください。
24か月で店を閉じたら、いくら払うか
月払いと使った期間の費用は同じではありません。
まず、同程度の保存・製氷能力を確保する機器一式を24か月使って撤退する、と仮定します。新品価格120万円に対し、ファイナンス・リースは月2万3,000円を60回、借受時の設置費8万円、返却費8万円と置きます。24回までの支払は55万2,000円ですが、残り36回は82万8,000円です。
残リース料相当額の精算が必要という契約なら、機器の支払は合計138万円です。設置と返却を足すと154万円。月2万3,000円を24倍した55万2,000円だけを「2年間の費用」とする計画は、2年間と撤退までの予算を98万8,000円少なく見積もります。修理・保守や電気代はまだ入れていません。
同じ新品を120万円で買い、設置8万円、2年間の修理・保守6万円、撤去8万円、売却手取35万円と仮定すると、差引107万円です。ただし開店前に大きく現金が出るため、撤退時までの総額が安くても、仕入や給与を払う余裕を失えば採用できません。借入を使うなら金利と返済も重ねます。
中古購入を65万円、設置8万円、修理等18万円、撤去8万円、売却手取15万円と置けば84万円になります。レンタルを月5万5,000円、設置8万円、返却8万円、24か月で追加違約金なく終了、対象修理は料金内という条件にすれば148万円です。これらは契約がその条件を満たすときだけ成立する数字です。
この試算で比べるべきは「リース月2万3,000円」と「レンタル月5万5,000円」ではありません。24か月で終了した場合の154万円と148万円、そして各契約に含まれない修理・停止費用です。
長く使うなら結論は変わります。購入品を売らずに使い続ける、リース満了後に再リースする、レンタル料を長年払い続けるという別の計算になるからです。18か月、24か月、60か月の三つの閉店月を入れ、設備の退出費を物件の賃料・フリーレントを含む出店費用へ足すと、店全体の撤退資金が見えます。
「リースだから修理込み」とは限らない
資金、保証、保守、休業補償を分けます。
ファイナンス・リースでは、利用者が選んだ機器をリース会社が買い、利用者へ貸します。機器の販売会社、資金を出すリース会社、店の三者が関わります。リース事業協会は、基本的に期間中の解約ができず、保守・修繕は利用者負担になる仕組みを説明しています。
メーカーの保証、販売店の中古保証、別契約の保守、動産保険は別物です。保証期間内でも消耗品、清掃不足、使用条件違反などの扱いが異なります。保守契約があっても、すべての部品、深夜の出動、代替機、廃棄した食材、売れなかった料理まで補われるとは限りません。
ホシザキの公式説明には、厨房機器の診断や保守契約による整備があり、部品代等にも一部例外が示されています。これを「どの機器でも故障費用ゼロ」と言い換えず、自店の型番、年式、地域、受付時間で見積を取ります。中古品を別の店から買う場合も、保守へ加入できるかを購入前に問い合わせます。
冷蔵庫が止まった夜に電話する相手は、リース会社とは限りません。修理受付、現地到着の目安、部品の手配、代替保管先を、購入先とは別の欄に書いておきます。
メインテナンス・リースという名称のように、保守を組み込む形もあります。とはいえ名称で範囲は確定しません。一般的なリース・レンタル・購入の契約構造を押さえたうえで、厨房では冷えない時間と衛生対応を具体的に追加するのが順序です。
冷えない一日を、売上まるごと損失にしない
避けられた費用と実際の廃棄を重ねず計算します。
故障による負担は、修理の請求書だけではありません。仕込んだ食品を捨てる、氷を外から買う、冷蔵車を借りる、メニューを減らす、予約客へ連絡する、といった支出と仕事が発生します。冷蔵庫が一台しかない店では、安く買えた差額を一度の停止が超える可能性があります。
ただし「一日売上8万円が消えたから損失8万円」と即断するのも粗い計算です。休業で発生しなかった仕入や決済手数料を除く必要があります。仮に失う売上8万円に対し、売らなければかからない費用が2万8,000円なら、固定費の回収へ回るはずだった5万2,000円が失われます。
これに修理費、代替機や保管の料金を加えます。廃棄食材は実際に捨てた取得原価で整理し、すでに仕入費や損失計算へ入れた金額を二重に足しません。予約の振替で翌日売れた分と完全に失った注文も分けると、保守料へいくら払えるかを考えやすくなります。
停止に備える費用は、修理代、代替保管、廃棄原価、失われる粗利へ分けると二重計上を避けられます。
温度を外れた食品を使えるかは、経営上の損得とは別の判断です。時間・温度の記録、自店の衛生管理手順、保健所や専門家の指示に従い、見た目やにおいで提供可否を決めません。予備庫、別店舗への移送、仕入の小口化は、機器の選定と同時に検討する対策です。
中古の年式より、夏の厨房で働けるか
店の温度、開閉、ピーク需要から能力を比べます。
中古機器は、傷が少ないかだけでは能力を読めません。庫内容量、扉の開閉頻度、熱い厨房の空気、周囲の放熱スペース、投入する食品の量で負荷が変わります。冷蔵庫と急速冷却用の機器は役割が違うため、「大きい箱なら仕込みも冷やせる」と用途を広げないことです。
製氷機は一日の能力表示に加え、氷を貯める量とピーク時間の取り出しを見ます。一日合計では足りても、ランチ開始から一時間へ注文が集中すれば不足し得ます。実際の室温・水温など、能力表示の条件と店舗条件を販売店に照合してもらいます。喫茶と居酒屋で同じ客席数なら同じ容量、とは決められません。
購入前には製造番号、修理履歴、冷媒、部品供給、保証の対象と期間、返品条件を受け取ります。整備済みという一言より、冷却試験、洗浄、パッキンや故障部品の交換など、何を行ったかを記録で見ます。停止していた機器を再使用する場合は、メーカーの手順に従った点検が必要です。
電気代も価格差を縮めます。二案の実使用電力量に一日6kWhの差があるという仮定なら、1kWh当たり30円、月30日、24か月で差は12万9,600円です。機器の表示電力を24時間掛けるのではなく、開閉や周囲温度を含む使用条件を揃えた推定・測定値で計算します。
中古の安さは、購入価格から再販売額を引いただけでは確定しません。部品が手に入る年数と、店の使用条件で冷える能力、電気代、停止時の逃げ道を含めて残る差です。
通路を曲がれない冷蔵庫は、契約しても使えない
搬入、工事、試運転を検収前に詰めます。
本体幅が入口より狭くても搬入できるとは限りません。梱包、取手、段差、階段の踊り場、エレベーターの開口、扉を開く余地まで必要です。機器を斜めにする、扉を外す、クレーンを使う場合は、機器と建物の制約を業者へ確認します。店主が自己流で分解して運ぶ前提にはしません。
電源は電圧だけでなく、単相・三相、容量、専用回路、接地を照合します。製氷機なら給水、排水、清掃時の作業空間も見ます。居抜き物件の差込口が空いているというだけで、その機器を安全に使える証拠にはなりません。必要な工事は有資格者・専門業者へ依頼します。
機器代、搬入、据付、配管・電気工事、試運転、旧機器搬出を見積上で分けます。追加工事を誰が承認し、開店日に間に合わなかったら何を借りるかまで決めると、「納品は済んだが営業できない」空白を減らせます。
リース事業協会の契約条項では、物件を検査して借受証を発行する手続が説明されています。到着したというだけで済ませず、型番、数量、傷、必要工事、試運転結果を販売店と照合します。不具合がある場合は黙って受領処理を進めず、販売店とリース会社へ記録を送って対応を合意します。
借りた冷蔵庫でも管理者になることがある
冷媒と書面上の修繕責任から判断します。
フロン排出抑制法の対象は、業務用として製造された空調・冷凍冷蔵機器で、冷媒にフロン類を使うものです。業務用冷蔵庫のすべてが同じ扱いではなく、非フロン冷媒なら同法の対象外です。メーカー、型番、銘板の冷媒を見て判定します。
環境省の説明では、原則は所有者が管理者ですが、書面で保守・修繕の責務を利用者へ定めたリース等では、その利用者が管理者になります。リースは利用者、レンタルは所有者となる場合が多いものの、契約名だけで自動判定するものではありません。
「自分の所有物ではない」は、フロン管理をしなくてよい理由にはなりません。機器の冷媒と、契約で保守・修繕を担う者を組み合わせて、管理者を特定します。
法定点検の対象・頻度、記録の保存、整備時の対応は、機器の種類や能力に応じて担当業者と整理します。清掃や点検を外注することと、法律上の責任が相手へ移ることも別です。中古で買うときは点検記録を引き継ぎ、閉店時にその記録が段ボールの中へ消えないよう機器台帳と結びます。
閉店の段取りは、機器を外した後まで続く
返却、回収、原状回復を明渡し日へつなげます。
購入品なら、再使用、売却、廃棄のどれにするかを決めます。リース品は所有者の承諾なく売らず、返還場所と送料、撤去、原状回復の指定を確認します。中古業者が無料回収すると言っても、返すべき他社所有物か、廃棄に必要な手続があるかは別の確認です。
撤去・返却・廃棄の費用と手配日は、機器の契約終了と店舗の明渡しをつなぐ条件です。
フロンを使用する対象機器を廃棄する場合、環境省は、登録を受けた充塡回収業者への引渡しや費用負担、行程管理書類を求めています。単に金属として搬出すれば終わりではありません。回収依頼書・委託確認書、引取証明書など、担当者と保存先を撤去前に決めます。
休業して後で再開する場合も、電源を抜くだけで済むとは限りません。ホシザキは製品群別に停止・再開時の扱いを案内しており、製氷機の型式によっても手順が違います。対象機器の説明書とサービス窓口へ確認し、配管や電装部分を自分で開ける汎用手順には置き換えません。
厨房機器の終了日は、最後に料理を出す日ではありません。返還・冷媒回収・搬出・配管処理まで済み、店舗を契約どおり明け渡せる日です。
先に一式契約せず、止められない機器を選ぶ
料理と営業期間に合わせて調達を組み合わせます。
機器すべてを同じ調達方法に揃える必要はありません。冷蔵が止まると仕込んだ食品を失う店なら、冷蔵庫の保守と代替手段を厚くする。繁忙期だけ使う機器は、終了条件が合うレンタルを探す。構造が単純で修理しやすく、衛生状態を確かめられる設備なら中古を候補へ残す。料理の売り方から配分を変えます。
さらに、機器を増やす前にピークの作業を見ます。注文の取り方や仕込みの時刻を変えることで必要容量が下がる場合もあります。飲食店のモバイルオーダーと省力化を調べるなら、人の仕事が減るかだけでなく、注文が厨房へ集中する時間も併せて検証します。
見積依頼には、予定営業期間、客席とピーク注文、保存する食品、現場図面、電源・給排水、故障時の代替先を書き添えます。同じ条件で新品購入、中古購入、リース、レンタルの提案を受け、18か月で撤退する列と60か月使う列を埋めます。開店時の月額欄だけでは見えなかった答えが、閉店月の列へ表れます。
参考情報
契約、保守、冷媒管理の公式資料です。
2026年9月5日確認。業界団体の一般的な契約説明と、メーカー個別の保守条件を区別して参照しています。
よくある質問
気になる質問を開くと、本文の重要点を短く確認できます。
Q居抜き物件の冷蔵庫をそのまま使ってもよいですか?
A所有者と譲渡対象を確認し、他社のリース品でないかを先に調べます。その後、型番・年式・修理履歴・冷媒・点検記録・衛生状態・能力を確認します。前の店で使えていたことだけでは、自店の営業に合うとは判断できません。
Qリース会社に機器を返せば、残りの支払はなくなりますか?
Aファイナンス・リースでは、返却だけで残リース料等が消えるとは限りません。中途解約の可否、精算額、返却費、設置部分の原状回復を契約先へ確認し、閉店前に書面で見積を受け取ります。
Q中古機器の電気代は新品より必ず高いですか?
A必ずではありません。型番、冷却能力、整備状態、設置温度、使用量で変わります。容量や使用条件を揃えて比較し、本体の表示電力を常に消費し続けると仮定した計算は避けます。
Q保守契約があれば食材が傷んだ損失も補償されますか?
A修理・点検の契約と、食材損害・休業損失を補う保険は別です。対象事故、免責、補償額、温度記録などの必要証拠を確認します。補償の有無にかかわらず、安全を確認できない食品を提供する判断には使いません。
Q短期出店なら全機器をレンタルすべきですか?
A一律ではありません。最低利用期間、返却費、必要な能力、在庫の有無で変わります。終了条件が合う機器だけ借り、購入して持ち運べる設備と組み合わせる案も比較します。
Qノンフロン冷蔵庫なら廃棄手続は何も要りませんか?
Aフロン排出抑制法の対象外でも、所有者の返却条件や廃棄物としての処理、冷媒の性質に応じた安全な取扱いは残ります。製品の説明書と自治体・専門業者へ確認し、自己判断で配管を切ったり分解したりしません。