保険業界

月給65万円超の厚生年金はいくら増える?2027〜2029年の上限引上げを計算

厚生年金の標準報酬月額上限が65万円から68万円、71万円、75万円へ上がります。本人・会社負担、将来年金、対象給与、賞与との違い、給与システムの切替を計算します。

給与担当者と従業員が、2027年から2029年までの厚生年金保険料の変化を給与明細と年表で確認している。

率は18.3%のままでも、計算に使う月額上限が上がれば本人と会社の負担は動きます。

月給80万円の会社員が、2026年と同じ給与のままでも、厚生年金の本人負担は三年かけて月9,150円増えます。会社も同額を追加負担します。保険料率が上がるからではありません。計算に使う標準報酬月額の上限が、65万円から75万円へ引き上げられるためです。

日程は一度に10万円ではありません。2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円です。厚生年金の保険料率18.3%を労使折半する一般的なケースでは、現行65万円との差に本人負担率9.15%を掛け、上限該当者の増加額を概算できます。

標準報酬月額が65万円から75万円になる人の厚生年金本人負担は月9,150円増え、会社負担も月9,150円増えます。月給65万円以下の人へ一律に9,150円を加える改正ではありません。

本記事は2026年9月8日に厚生労働省の成立法解説、上限引上げ特設ページ、負担・給付試算、年金制度の体系・歴史、財政検証資料、日本年金機構の算定基礎届と保険料解説を確認しました。実際の給与控除は、標準報酬月額の決定通知、事業所の控除時期、端数処理、共済・健康保険の扱いで確定します。

65万円から75万円まで三年かけて上がる

段階ごとの本人・会社負担を率から計算します。

2026年時点の厚生年金では、実際の報酬が上限を超えても標準報酬月額は65万円までです。月給70万円と100万円の人が、月給分の厚生年金では同じ上限等級になる場面があります。改正はこの頭打ちを三段階で上へ動かします。

2027年9月は68万円です。65万円との差3万円に本人負担率9.15%を掛けると、本人の追加負担は月2,745円、会社も月2,745円です。2028年9月は71万円となり、現行との差6万円で本人月5,490円、会社月5,490円です。2029年9月は75万円となり、現行との差10万円で本人月9,150円、会社月9,150円です。

これは標準報酬月額が各年の新上限に達する人の単純比較です。給与が67万円なら2029年に75万円等級になるとは限りません。新しい等級表の報酬月額範囲と日本年金機構の決定を使い、自分の総支給額へ75万円を直接代入しません。

三段階の本人負担増は、新上限まで該当する場合に月2,745円、5,490円、9,150円が目安です。同額の会社負担も人件費予算へ入ります。

「月給」は基本給だけではなく報酬月額で見る

手当と現物給与を含む判定対象を整理します。

標準報酬月額の基になる報酬には、基本給だけでなく、残業手当、役職手当、住宅手当、家族手当、通勤手当など、労働の対価として支払うものが含まれます。食事や住宅などの現物給与も、定められた価額へ換算して扱う場合があります。

年俸960万円を12分割して月80万円支給する人と、月60万円に賞与240万円を組み合わせる人では、年収が同じでも月給分と賞与分の厚生年金計算が違います。固定残業代、毎月の業績給、年4回以上の賞与は報酬の扱いを確認します。

給与担当者は、年収一覧ではなく、現在の標準報酬月額が65万円の人、実際の報酬月額、新上限で想定される等級、賞与、70歳到達、育児休業、休職を別列にします。会社員とフリーランスの保障比較で年収だけを比べないのと同じく、社会保険では支払形態と加入月数が結果を変えます。

4月から6月の給与と9月改定を混同しない

定時決定と制度上限変更を別イベントとして扱います。

通常の定時決定では、事業主が4月、5月、6月に支払った報酬を算定基礎届で届け、日本年金機構が標準報酬月額を決め直します。決定した標準報酬月額は原則9月から翌年8月まで使います。固定的賃金が変わり、一定の条件を満たすと月額変更届による随時改定があります。

今回の上限引上げも9月からですが、通常の昇給と同じ理由ではありません。2027年9月に本人の基本給が変わらなくても、現在の上限等級にいる人は制度改正で新等級の対象になる可能性があります。給与システムが「算定基礎届の結果がない人は前年等級のまま」と処理すると、新上限への切替を落とします。

逆に、対象者全員へ9月から75万円を入れると二年早い誤控除です。適用年月を2027年9月、2028年9月、2029年9月の三つに分け、法定の等級マスターと通知データを更新します。

4〜6月の報酬で決める定時決定と、2027〜2029年の法定上限変更は別のイベントです。給与システムでは同じ9月処理に見えても、変更理由と対象者を分けます。

給与担当者が2027年68万円、2028年71万円、2029年75万円の適用月と労使負担を年次表で検算している。
上限は一度に75万円へ変わりません。三つの適用年月と等級マスターを分けて管理します。

賞与の150万円上限は別の計算で残る

月給と賞与を二重計算しない境界を示します。

厚生年金の標準賞与額は、税引前賞与から1,000円未満を切り捨て、同じ月に複数回支給した場合は合算し、1か月150万円を上限にします。月給分の標準報酬月額上限75万円とは別です。

月給80万円、賞与200万円の人なら、月給は将来の新上限等級、賞与は標準賞与額150万円上限で計算します。「月給上限が75万円になったので賞与上限も75万円」「月給と賞与を合算して75万円まで」という処理はどちらも誤りです。

健康保険の標準賞与額上限は年度累計573万円で、厚生年金の1か月150万円とは期間も違います。給与明細に一つの「社会保険料」としか表示されなくても、健康保険、介護保険、厚生年金を別々の標準額と率で再計算します。

手取り減だけでなく将来給付も増える

公式試算の加入期間と前提を外さず読みます。

標準報酬月額が上がると、老齢厚生年金の報酬比例部分に反映されます。厚生労働省は、賃金等が月75万円以上の人について、本人保険料が月9,100円程度増え、その状態が10年続くと年金が月5,100円程度増える試算を示しています。税・社会保険料控除を考慮した別の試算値もあり、前提を外して自分の確定額とは読めません。

別資料では、上限75万円で20年加入した場合の本人保険料増を年11.0万円、年金額増を年12.2万円の目安として示しています。加入月数、標準賞与、過去の報酬、受給開始、在職、税で実際の受取額は変わります。

手取りを守るため給与を65万円以下に下げ、残りを賞与や手当に移せば必ず有利という結論にもなりません。労働条件の不利益変更、残業単価、賞与上限、傷病手当金・出産手当金の基礎、雇用保険、所得税、将来給付を一体で検討します。

追加保険料は単なる増税ではなく報酬比例の将来年金へつながります。ただし、公式試算は加入期間等を置いたモデルで、個人の回収年数を保証しません。

本人・会社の三年総額を予算へ入れる

年度内の適用月数まで入れて会社コストを見積もります。

新上限に達する人の厚生年金負担を、現行65万円と単純比較します。
適用上限本人負担増/月会社負担増/月
2027年9月68万円2,745円2,745円
2028年9月71万円5,490円5,490円
2029年9月75万円9,150円9,150円
月給65万円以下原則として上限未満上限改正だけでは増えない同左

月給が新上限以上で毎月加入し続ける一人を、現行65万円上限と単純比較します。2027年9月からの12か月ではなく、年度予算なら9月から翌3月までの7か月となる点に注意します。会社の会計年度と制度適用月を分けます。

2027年度の追加会社負担は、一人当たり月2,745円を7か月とすれば19,215円です。2028年度は4月から8月の5か月を2,745円、9月から3月の7か月を5,490円として52,155円です。2029年度は5か月を5,490円、7か月を9,150円として91,500円です。賞与と端数、対象者の入退社を除いた概算です。

対象者100人なら、会社負担だけで2029年度概算915万円です。本人からも同規模の追加控除があるため、給与担当者は「会社コスト」と「従業員手取り」を別々に説明します。年収レンジ別の人数が分からなければ、65万円上限等級の現有人数から最大ケースと段階離脱ケースを作ります。

傷病手当金など健康保険の上限と混ぜない

似た名称と同じ数字を別制度へ流用しません。

標準報酬月額という同じ言葉を健康保険と厚生年金で使うため、一つの上限変更がすべての給付へ同じように反映されると誤解されます。今回の特設ページは厚生年金等の標準報酬月額上限引上げを説明しています。加入する健康保険の等級・上限と、傷病手当金・出産手当金の算定は別に確認します。

在職老齢年金の支給停止基準も別です。在職老齢年金の計算で使う基準額が65万円であることと、現役加入者の標準報酬月額上限65万円は、2026年に数字が同じでも役割が違います。一方が変わったという理由で他方へ代入しません。

遺族厚生年金も、制度改正の施行日、対象年齢、経過措置を別に判定します。2028年の遺族厚生年金改正と本改正を一枚の案内へ詰めるなら、対象者と開始年を分けます。

給与システムは三つの境界値で試験する

等級、賞与、休職、端数、控除月を通しで検証します。

本番移行前に、各年の新上限より下、境界付近、上のテスト従業員を作ります。月給、現物給与、固定残業、同月入社、月途中退職、育児休業等終了時改定、随時改定、二以上事業所勤務、70歳到達、賞与同月二回を含めます。

期待値は、総支給へ9.15%を直接掛けた額ではなく、決定された標準報酬月額と保険料額表、端数処理で作ります。本人控除、会社負担、納入告知、仕訳、給与明細、賃金台帳、電子申請データが同じ等級を指すか照合します。

2027年8月分と9月分をまたぐ締日・支払日の控除時期は、会社が当月控除か翌月控除かで明細表示が変わります。「9月支給」だけで一律に説明せず、何月分保険料を何月給与から控除する規程かを社員向け案内に書きます。

給与システム担当者が、月給、賞与、標準報酬月額、本人控除、会社負担のテスト結果を複数の給与明細で照合している。
境界額だけでなく、賞与、休職、端数、控除月まで通しで試すと、制度日だけの設定漏れを発見できます。

制度日だけをマスターへ登録せず、境界額、賞与、休職、端数、控除月を含む給与明細から納付までの通し試験を三年分行います。

二つ以上の会社で働く人は報酬を合算して確認する

各社単独ではなく合算後の決定通知と按分額を使います。

複数の適用事業所で同時に厚生年金へ加入する人は、各社が自社給与だけを見て「65万円未満だから対象外」と決めません。二以上事業所勤務の届出と決定通知に基づき、各事業所の報酬を合算した標準報酬月額を、各社の報酬額に応じて按分した保険料を確認します。

たとえばA社45万円、B社35万円なら合計80万円です。単純に各社で45万円等級と35万円等級を別々に計算するのではなく、選択事業所を管轄する年金事務所等から届く保険料額を給与へ反映します。新上限の導入時は、本人の他社報酬が変わっていなくても合計上限が動くため、各社の按分額も変わり得ます。

役員がグループ会社を兼務するケースでは、資格取得・喪失、報酬変更、選択事業所、通知の受領担当を一覧にします。一社だけ先に新等級へ切り替え、他社が旧通知のままだと本人控除合計と納付額が合いません。

二以上事業所勤務は各社給与を別々に上限判定せず、合算後の決定通知と按分保険料を各社の給与明細へ反映します。

従業員への説明は手取り・会社負担・給付を分ける

増える理由と公式試算の限界を一枚で伝えます。

対象者へは、現行等級、新等級、適用月、本人負担増、会社負担増、将来給付へ反映することを一枚で示します。「高所得者だけ増税」とも「払った分は必ず短期で戻る」とも断定しません。公式試算の加入年数と税考慮の前提を添えます。

月給65万円以下の社員にも、全員対象ではないことを明記します。昇給で後に新上限等級へ入る場合は、通常の定時決定・随時改定と合わせて通知します。年金の受給開始時期比較は受け取り側の判断で、本記事は現役時の保険料算定です。二つを同じ損得表へ混ぜません。

質問窓口には、制度一般、個人の等級、給与計算誤り、老後見込額を分けた経路を用意します。給与担当者が個人の老後生活を断定せず、決定通知やねんきんネット、年金事務所等の確認先へつなぎます。

2027年9月までの準備表

三年連続の制度切替を初年度だけで閉じない工程です。

2026年中に、65万円上限等級の人数、月額報酬、賞与、入退社予定を把握し、2027〜2029年度の労使負担を予算化します。給与・人事・会計・福利厚生ベンダーの責任者を決め、改修提供時期と法令マスターの配信方法を確認します。

2027年前半は、決定通知取込、保険料額表、控除月、仕訳、社員案内をテストします。9月適用後は最初の納入告知と給与明細を抽出し、本人控除と会社負担を照合します。2028年・2029年の更新日を同じチケットへ置き、初年度成功で閉じません。

役員報酬を変更する場合は、厚生年金だけでなく法人税上の定期同額給与、株主総会・取締役会、雇用契約、他の社会保険給付を確認します。保険料差だけを目的に支給時期を動かす前に、制度全体の不利益を比べます。

参考情報

日程、率、給付、給与実務を支える公式資料です。

以下は2026年9月8日に内容と到達性を確認する一次情報です。

よくある質問

気になる質問を開くと、本文の重要点を短く確認できます。

月給60万円の人も2027年9月から厚生年金が増えますか?

標準報酬月額上限の引上げだけを理由に一律増額されるわけではありません。昇給、定時決定、随時改定、他制度の率変更があれば別に動くため、決定通知と保険料額表で確認します。

月給80万円なら2027年からいきなり75万円で計算しますか?

しません。上限は2027年9月68万円、2028年9月71万円、2029年9月75万円へ段階的に上がります。各年の等級表と適用年月を使います。

増えるのは本人負担だけですか?

厚生年金保険料率18.3%を労使折半する一般的なケースでは、本人と会社が同額を追加負担します。標準報酬月額65万円から75万円なら双方とも月9,150円増の概算です。

賞与200万円にも新しい75万円上限を使いますか?

使いません。厚生年金の標準賞与額は支給1回、同月複数なら合算して1か月150万円上限です。月給分の標準報酬月額上限と別計算です。

保険料が増えた分は将来必ず全額戻りますか?

報酬比例の年金額は増えますが、加入期間、受給開始、在職、寿命、税等で受取総額は変わります。厚生労働省の試算は一定の賃金と加入年数を置いたモデルです。

給与担当者はいつシステムを変更しますか?

2027年9月、2028年9月、2029年9月の各適用に備えます。法令マスターだけでなく、控除月、決定通知、賞与、休職、端数、仕訳、納入告知まで三年分を試験します。

タグ
#厚生年金#標準報酬月額#社会保険料#給与計算#年金制度改正#手取り#2027年

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