父が亡くなり、銀行4行、証券会社1社、自宅の相続登記、相続税申告を同じ月に進めたい。戸籍謄本の原本が一組しかなければ、一つの窓口へ提出して返却を待つ間、残りの手続が止まります。この待ち時間を減らす道具が、法務局の「法定相続情報一覧図の写し」です。
制度の利用は無料です。被相続人と相続人の戸除籍謄本等を集め、家族関係を一覧図にして法務局へ申し出ると、登記官が確認し、認証文付きの写しを必要通数交付します。戸籍原本も返却されるため、一覧図の写しを複数窓口へ同時に出せます。
相続手続が二つ以上並行するほど一覧図の価値は上がります。一方、手続先が一つで戸籍も少ないなら、一覧図を作らず戸籍一式を直接提出する方が早い場合があります。
本記事は2026年9月8日に、法務局の具体的手続、申出書、法務省の手続フロー、一覧図の様式、相続登記・相続人申告登記の案内、不動産登記規則を確認しました。提出先ごとに必要書類は異なるため、一覧図で戸籍の提出を省略できるかは銀行、証券会社、税務署、年金事務所等の窓口へ確認します。
作る価値は相続人の人数より同時に動かす窓口数で決まる
提出先と期限を並べ、戸籍原本の待ち時間を可視化します。
相続人が5人いても、預金口座が1行だけなら戸籍原本の返却を一度待てば済むかもしれません。相続人が1人でも、銀行、証券、保険、不動産、税申告を同時進行するなら、一覧図の写しを複数通用意する効果があります。
まず、手続先、期限、戸籍原本または一覧図の要否、原本返却、郵送日数を一枚にします。相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月、相続放棄は原則3か月、相続登記は取得を知った日から3年というように、時計が異なります。一覧図の取得だけを先に進め、期限の短い検討を止めてはいけません。
相続口座の凍結と払戻しでは、遺産分割前の仮払いと金融機関手続を扱っています。一覧図は相続関係の証明を簡潔にしますが、遺言書、遺産分割協議書、印鑑証明、本人確認、残高証明の要否までは消しません。
「相続人が多いから作る」ではなく、「戸籍一式を同時に何か所へ提出したいか」で作成価値を測ります。
一覧図が証明することと証明しないことを分ける
法定相続人と実際の取得者を混同しないための境界です。
一覧図は、被相続人の出生から死亡までの戸籍等を基に、死亡時点の法定相続人を図または列挙形式で示します。登記官の認証が付いた写しは、各種相続手続で戸除籍謄本の束の代わりとして利用できます。
しかし、誰が土地を取得するか、長男が預金を全部受け取るか、相続人が相続放棄したかは、戸籍の続柄だけでは決まりません。遺言、家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書、遺産分割協議書など、別の証拠が必要です。
婚姻前の子、養子、代襲相続、数次相続があるときは、一覧図の線だけを見て「持分は均等」と決めません。法定相続分と実際の取得割合を分け、税務上の特例や債務承継も別に判定します。
一覧図は「誰が法定相続人か」を戸籍から証明する資料であり、「誰が何を取得したか」を証明する遺産分割の完成図ではありません。
戸籍は被相続人の出生から死亡まで連続して集める
転籍と改製の前後を年表でつなぎます。
必要書類の中心は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本です。転籍、婚姻、戸籍の改製があれば一通で終わらず、旧本籍地へ遡ります。相続人全員の現在戸籍、被相続人の住民票除票または戸籍の附票、申出人の氏名・住所を確認できる書類も揃えます。
戸籍の広域交付で集めやすくなった範囲があっても、コンピューター化前の戸籍、兄弟姉妹相続、直系尊属の確認などでは時間がかかります。読めない旧字体や続柄を推測して一覧図を先に描かず、戸籍の在籍期間を年表にし、出生へつながるかを一冊ずつ確認します。
被相続人の最後の住所を一覧図に記載するなら住民票除票等が必要です。保存期間等で取れないときは、戸籍の附票や不在住証明などを登記手続の目的と一緒に相談します。相続土地を国庫へ帰属させる手続を検討する場合も、一覧図だけで土地の境界、管理費、負担金の要件は満たしません。
申出先は四つの候補から郵送と再交付まで考える
管轄、補正、将来の再交付を合わせて選びます。
申出ができる法務局は、被相続人の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産所在地を管轄する登記所です。不動産を所有していなかった人でも、他の三つの候補を使えます。
窓口へ出向くだけでなく郵送申出もできます。急ぐ場合は、戸籍収集地ではなく、申出人が補正に対応しやすい住所地管轄を選ぶ考え方があります。申出書、一覧図、戸除籍謄本等、本人確認書類、返信用封筒を送る前に、原本還付の扱いと不足時の連絡方法を管轄局へ確認します。
申出人になれるのは被相続人の相続人です。代理人を使う場合は親族や資格者代理人など制度上の範囲と委任状を確認します。家族代表が一覧図を作るなら、誰の氏名で申出るかを、後の再交付まで見通して決めます。
必要通数は「提出先数+予備」ではなく原本返却の運用で数える
窓口別の保管・返却方法から通数を決めます。
申出書には必要通数と利用目的を記載します。無料だから20通とするのではなく、金融機関5、登記1、税申告1、年金1など予定先を並べ、各窓口が写しを返却するか、データ取込後に返すか、原本を保管するかを確認します。
一覧図の写し自体が無料でも、戸籍の取得、郵送、専門家への依頼には費用がかかります。必要通数が足りなければ再交付できますが、法務局が一覧図を保管するのは申出日の翌年から5年間です。保存期間を過ぎれば同じ申出をやり直す可能性があります。
再交付を申し出られるのは、当初の申出人です。申出人が長期入院、海外転居、死亡した場面で、他の相続人が当然に再交付を受けられる前提を置きません。相続人全員へPDFのようにコピーして使うのではなく、認証文付きの原本が必要かを提出先ごとに決めます。
法務局の保存は永久ではなく、申出日の翌年から5年です。必要通数と申出人は、数年後の名義変更まで含めて選びます。
続柄と住所の書き方で使える手続が変わる
簡略化によって税務や登記で使いにくくならないよう設計します。
一覧図の続柄は、戸籍に記載された「長男」「二女」などと記す方法のほか、「子」と記す様式があります。法務局の記載例は、続柄を「子」とした一覧図が相続税申告等で利用できない場合があることを案内しています。見た目を簡単にするためだけに表記を省略しません。
相続人の住所記載は任意ですが、住所を記載し、その確認書類を提出すれば、相続登記で住民票の写しの提出を省略できる場面があります。全員の住所を載せる必要性、転居予定、他手続での利用を見て判断します。
死亡した相続人がいる数次相続、代襲相続、外国籍の関係者がいる場合は、標準様式へ無理に当てはめず法務局へ相談します。一つの一覧図で複数の相続を表現できるとは限らず、被相続人ごとに申出が必要になる場合があります。
相続登記で一覧図を使っても権利関係の審査は残る
戸籍以外に必要な遺言、分割、住所、税を分けます。
相続登記では、一覧図の写しを戸籍束の代替として利用できます。ただし、登記申請書、被相続人の住所のつながり、遺言または遺産分割協議書、取得者の住所証明、固定資産評価額、登録免許税などは別に用意します。
2024年4月から相続登記が義務化され、取得を知った日から3年以内という期限があります。遺産分割がまとまらない間に相続人申告登記を使う場合、一覧図の写しや法定相続情報番号を使える案内がありますが、本来の所有権移転登記が完了したことにはなりません。
土地の境界や面積に疑問があるなら、地籍調査の境界みなし確認の通知と相続登記を別の工程にします。法定相続人を確定できても、不動産の現況と公図・登記簿の一致までは一覧図で証明できません。
銀行と税務では受付可否を提出前に聞く
制度上の利用可能性と各窓口の必要書類を照合します。












