不動産業界

シェアオフィスと賃貸オフィスは3年でどちらが得?人数変動・登記・退去費まで比較

月額単価では見えない入居工事、会議室、通信、登記、増席、原状回復、退去期間を含め、10人から25人へ増える会社の3年総額を比較します。

個室と共用ラウンジを使い分ける成長中の少人数チーム。

席の値段だけではなく、集中、会議、来客、機密、増員の場面を一日の動線として比べます。

社員10人の会社が、18か月後に25人になる計画を立てています。専用デスク月8万円のシェアオフィスなら10席で月80万円です。賃貸オフィスの賃料が月45万円なら安く見えますが、保証金、仲介、内装、家具、回線、清掃、電気、会議室、移転、原状回復を足す前の数字です。

反対に、シェアオフィスを25席へ増やすと月200万円です。全員が毎日出社しない会社なら固定25席は不要でも、電話ブースと会議室が足りず、予約超過料金と外部会議室が増える場合があります。比較の中心は不動産単価ではなく、三年間の人数と使い方です。

オフィスの3年総額は、契約した面積や席数ではなく、実際に働けた席、会議時間、機密性、増減に要した期間、退去時の費用まで含めて計算します。

本記事は2026年9月2日に確認した国税庁、法務局、厚生労働省、東京都中小企業振興公社の公開情報を基に、特定施設の料金ではなく比較設計を示します。

10人の現在と25人の計画を一枚に置く

在籍人数、出社率、集中日を36か月の三シナリオへ分けます。

最初に36か月を横軸にし、正社員、業務委託、出社率、採用予定、退職見込みを月ごとに置きます。席数は在籍人数と同じではありません。10人在籍で平均出社率60%でも、火曜だけ全員が集まるなら6席では足りません。週次全社会議をオンラインへ移すか、10席を確保するかで必要設備が変わります。

三つのシナリオを作ります。基準は10人から18人、拡大は25人、縮小は8人です。採用計画だけの25人を前提に広い賃貸オフィスへ入ると、未使用面積へ内装費と賃料を払います。現在10席だけのシェアオフィスへ入り、同じ区画で25席へ増やせない場合は、成長時に二度目の移転が起きます。

比較すべき面積は「今の10人が座れる広さ」ではなく、36か月の人数シナリオごとに、いつ席を増減し、何か月分を重複契約するかです。

10人、18人、25人の出社人数を月別に置き、個室と会議室の必要量を図面上で検討するチーム。
採用計画を一つに決め打ちせず、拡大、基準、縮小の三つで必要席と移転時期を出します。

初期費用ゼロに見える項目を洗い出す

保証金、入居工事、月額オプション、退去費の現金時期をそろえます。

シェアオフィスは家具、回線、受付、清掃、共用ラウンジを月額へ含むことが多く、短期間で仕事を始めやすい点が強みです。しかし、入会金、保証金、カード発行、登記、郵便転送、ロッカー、複合機、会議室、電話ブース、時間外空調、追加ゲストの条件は施設ごとに違います。

賃貸オフィスでは、敷金・保証金、礼金、仲介、保証会社、火災保険、設計、内装、電気、消防、家具、回線、入退室、引越しが入居前に集中します。保証金は全額費用とは限りませんが、返還まで現金を拘束します。償却、原状回復、未払控除によって戻らない部分を分けます。

国税庁は、事務所など建物の貸付けを消費税の課税対象として説明しています。保証金でも返還しないことが契約で定められた部分は権利設定の対価として扱われ、退去時に原状回復費として差し引く金額は別の課税関係を持ちます。見積書では税込・税抜と返還予定額を混ぜません。

保証金を費用ゼロ、月額サービスを初期費用ゼロと置くと、現金の拘束と退去時の支出が比較表から消えます。

10人から25人へ変動する会社が、36か月で比較する費用と運用。
業態費用の出方変化への対応見落としやすい条件
シェアオフィス席・個室の月額へ設備や共用部を含む契約範囲内で増減しやすい会議室超過、登記、郵便、機密、追加席在庫
賃貸オフィス保証金、内装後に賃料・運営費増床・縮小には移転や工事が伴う二重賃料、指定工事、原状回復、空席
併用本店固定費と変動席の月額職種・地域ごとに席を変えられる二重管理、セキュリティ、所属感
完全リモート在宅手当、端末、会議場所、拠点費採用地域を広げやすい住所、来客、機密、孤立、労務安全

1席単価ではなく使える時間へ割り戻す

会議室と電話ブースの不足も、失われる時間として費用へ加えます。

月80万円で10席なら一席8万円です。ただし、会議室を月40時間使い、そのうち20時間が超過で1時間5,000円なら10万円が増えます。電話ブースが二つしかなく待ち時間が一人一日15分、営業6人で月20日なら月30時間が失われます。賃料ではない損失も、働ける時間へ直すと比較できます。

賃貸オフィス月45万円に共益費8万円、電気4万円、清掃3万円、回線2万円、受付なしを加えると月62万円です。初期内装1,200万円を36か月で使い切る前提なら月33万3,000円相当になり、合計は月95万3,000円です。これは説明用の仮定であり、実際は面積、地域、仕様、再利用資産、契約期間で変わります。

シェアオフィスも36か月ずっと同じ10席ではありません。10席12か月、18席12か月、25席12か月なら、席単価8万円の単純総額は5,088万円です。賃貸は余裕面積を早く借りるため、低成長時の空席費が増えます。どちらも基準、拡大、縮小の確率を置き、確率でごまかさず三案の現金残高も残します。

月額比較の結論が逆転するのは、追加席単価より、内装を何年使えるか、二度目の移転が起きるか、空席を何か月抱えるかの三点です。

登記可能は営業可能と同じではありません

住所利用を許認可、銀行、郵便、退去後変更まで通して確認します。

商業・法人登記は本店所在地を公示する制度です。法務局は本店移転の登記手続を案内し、管轄外へ移す場合には旧所在地と新所在地の登記申請が関係します。契約書で登記利用が許されても、許認可、銀行、取引先、郵便、現地調査が同じ住所を受け入れるとは限りません。

施設を契約する前に、法人登記、税務・社会保険の届出、許認可、古物商や人材紹介などの事業要件、銀行口座、補助金、外国人の在留手続で必要な実体を確認します。業種ごとの判断は所管窓口へ照会し、運営会社の「登記可」という一語だけに任せません。

本店を移すと、Webサイト、請求書、契約書、名刺、法人カード、銀行、保険、郵便、取引先登録も更新します。退去後に同じ住所を使えないなら、登記変更までの期限と郵便転送期間を契約終了から逆算します。個人事業か法人かの判断で法人化時期を考える場合も、住所の移転回数を初年度費用へ入れます。

住所の比較は、登記欄に書けるかではなく、許認可、銀行、郵便、来客、退去後の変更を一つの運用として成立させられるかで行います。

共用部の広さより機密の境界を確認する

会話、画面、紙、ネットワーク、来客の漏えい経路を現地で見ます。

採用面談、顧客の未公開情報、給与、人事評価、医療・金融データを扱う会話は、オープンラウンジではできません。個室でも壁が天井まで届くか、隣室へ音が漏れないか、ドアの施錠、入退室ログ、来客動線、清掃員の入室、監視カメラ、廃棄物を確認します。

Wi-Fiが料金に含まれていても、共用ネットワークへ機密端末をそのまま接続しません。利用者分離、有線接続、固定IP、VPN、障害時回線、機器持込み、ネットワークログの条件を情報管理基準へ照らします。回線追加ができない施設なら、移転より前に事業要件で外れます。

賃貸オフィスは専有境界を設計しやすい反面、入退室、ネットワーク、鍵、警備を自社で構築します。シェアか賃貸かではなく、顧客との契約で求められる管理策を満たす費用を双方へ足します。ジョブ型雇用の設計で働く場所を役割ごとに定めると、常設席が必要な職種と予約席で足りる職種を分けられます。

空気と照明は福利厚生ではなく執務条件です

契約定員と安全に働ける実利用上限を分けます。

厚生労働省の事務所衛生基準規則は、労働者一人当たりの気積を10立方メートル以上とし、換気、温度、照度などの基準を定めています。共用ラウンジが広く見えても、自社が常時使える執務区画の人数、天井高、換気を確認します。

窓のない小個室では、人数上限、二酸化炭素濃度、空調時間、におい、騒音を実地で見ます。内覧は空いている昼だけでなく、利用が集中する曜日と時間帯に行います。Web会議を同時に始めた時の音、電話ブースの待ち、会議室予約の埋まり方を運営会社へ尋ねます。

賃貸オフィスの内装でも、席を詰めれば効率が上がるわけではありません。避難経路、消防設備、電源容量、空調区画、照度、音、休憩場所を図面で確認します。採用が失敗する理由を待遇だけで分析せず、候補者が内覧時に感じる働く環境も採用コストへ含めます。

契約上の定員ではなく、全員が通話し、会議し、休憩しても安全に働ける人数を実利用上限として採用計画へ戻します。

退去費は最後の見積では遅い

二重賃料、原状回復、住所変更を契約初日から引き当てます。

シェアオフィスでは解約予告、最低利用期間、途中解約、席削減の申請期限、原状回復、カード・鍵紛失、郵便転送、登記変更猶予を確認します。複数拠点を使える契約でも、主拠点を解約した後に登記や郵便だけ残せるとは限りません。

賃貸オフィスは解約予告が数か月前に必要な場合があり、新オフィスとの二重賃料が生じます。原状回復の範囲、指定業者、工事単価、工事期間、明渡し条件を契約前に読み、入居時の写真と図面を保存します。住宅向けの原状回復ルールを事業用賃貸へそのまま当てはめません。

事業用物件の賃貸交渉では、賃料以外の契約条項を扱っています。今回の3年比較では、退去時に戻る保証金、戻らない償却、原状回復、二重賃料、引越し、業務停止をそれぞれ別行にします。

入居、増席、縮小、二重賃料、原状回復を36か月の費用表で比較する経営会議。
入居時だけでなく、18か月後の増員と36か月目の退去までを同じ資金計画へ置きます。

退去費を三年後の例外にせず、契約初日に36分の1ずつ引き当てると、安く見える賃料と高く見える月額サービスを同じ分母で比べられます。

移転日には営業停止時間も発生する

設備と住所だけでなく、社員と顧客が失う時間を費用へ入れます。

家具と段ボールを運ぶ費用だけでは移転原価になりません。回線切替、複合機、入退室、電話番号、郵便、社員の通勤経路、顧客への案内を同じ日に切り替えます。営業とサポートが半日止まり、20人が四時間使うなら80時間です。人件費と失注リスクを二重賃料とは別に置きます。

シェアオフィスは家具付きでも、端末、モニター、書類、観葉植物、在庫を移します。旧拠点の登記・郵便を残すため一か月延長するなら、その月額を加えます。賃貸オフィスは内装工事の遅延に備え、旧契約の明渡しと新契約の引渡しに余裕を取ります。

移転当日の完了条件は、鍵を受け取ることではありません。全社員が認証でき、顧客電話を受け、機密会議を開き、郵便・荷物を受領できる状態です。拠点を替える度に同じ確認表を使い、再移転の費用を三年シナリオへ戻します。

社員の通勤時間が片道15分延び、20人が月20日出社するなら、月200時間が移動へ移ります。賃料の安い郊外へ移した差額を上回ることもあります。採用候補者の居住地、顧客訪問、鉄道の代替経路を地図へ重ね、住所のブランドイメージだけで決めません。

意思決定は三つの撤退条件まで書く

人数計画が外れた時に移転を始める数値条件を置きます。

シェアオフィスが向くのは、人数変動が大きい、開業までが短い、内装へ人を割けない、複数都市を試す、採用計画が未確定な場合です。賃貸オフィスが向くのは、人数と地域が安定し、独自設備、強い機密境界、来客体験、長期利用による内装償却が必要な場合です。

ただし、二者択一にしなくても構いません。本店と機密部門を賃貸オフィスへ置き、営業の地方拠点をシェアオフィスにする。専有個室を持ちながら、繁忙期だけ共用席を追加する。実験期間六か月をシェアで過ごし、採用人数が確定してから賃貸へ移る方法があります。

撤退条件は三つ置きます。会議室の予約失敗が月五回を超える、追加席を含む月額が賃貸案の36か月換算を三か月連続で上回る、顧客のセキュリティ要件を満たせない。このどれかで移転計画を開始します。賃貸側は空席率40%が六か月続く、増員で法令・安全上限へ達する、更新条件が予算を超える時に縮小・移転を検討します。

東京都中小企業振興公社の創業支援施設は、単なる机の貸出しではなく、インキュベーションマネージャーの支援や交流機能を提供しています。支援が経営課題の解決に使えるなら価値がありますが、使わないサービスを「付加価値」として全額正当化しません。面談回数、紹介、採用、受注など利用成果を記録します。

最も安いオフィスではなく、人数計画が外れた時に損失を限定でき、働き方と顧客要件を満たす組合せを選びます。

まとめ

三年の変化と出口を含む総額で選びます。

シェアオフィスの月額には、家具、回線、清掃、受付、柔軟性が含まれます。賃貸オフィスは専有空間を長く使うほど初期投資を回収しやすく、独自の働き方と機密境界を設計できます。どちらも表示賃料だけでは結論が出ません。

36か月の基準・拡大・縮小シナリオへ、席、会議、初期投資、保証金、二重賃料、原状回復、住所変更を入れ、最悪案でも現金が残る方を選びます。

参考情報

以下は2026年9月2日に確認した一次情報です。

よくある質問

気になる質問を開くと、本文の重要点を短く確認できます。

シェアオフィスは賃貸オフィスより必ず安いですか?

少人数・短期間では初期費を抑えやすい一方、席数が増え、会議室や個室の追加が続くと逆転します。36か月の人数シナリオと退去費まで比較します。

登記可能なシェアオフィスなら、どの事業でも営業できますか?

登記可と許認可・銀行・取引要件の適合は別です。事業ごとの所管窓口、現地調査、郵便、専有性の条件を確認します。

保証金は3年総額へ全額入れますか?

返還予定部分は費用と現金拘束を分けます。償却、未払控除、原状回復で戻らない見込み額は費用へ入れ、返還時期は資金繰りへ置きます。

席数は在籍人数と同じだけ必要ですか?

出社率と集中日で決めます。平均出社率だけでは、全社会議の日や電話ブース需要を過小評価するため、曜日・職種別の同時利用を測ります。

賃貸オフィスの原状回復費はいつ見積もりますか?

契約前に範囲、指定業者、単価、工期、明渡し条件を確認し、入居時写真を残します。退去直前の見積だけでは移転予算を守れません。

シェアと賃貸を併用してもよいですか?

本店と機密部門を専有拠点へ置き、変動する営業席をシェアにする方法があります。情報管理、郵便、勤怠、災害時連絡を二拠点で統一します。

タグ
#シェアオフィス#賃貸オフィス#レンタルオフィス#オフィス移転#登記#原状回復#3年TCO#働き方

業界比較図鑑について

業界比較図鑑は、生活者が世の中の仕組みを理解するための図鑑メディアです。編集部が中立的に業界を整理し、評価や推奨を含めず、事実情報として提示しています。

業界一覧を見る