「防災用の水を1箱買ったから一週間は大丈夫」。2リットル6本入りなら12リットルです。国が示す飲料・調理用の目安である1人1日約3リットルを使うと、一人でも4日分、4人家族なら一日分です。備蓄の不足は、棚の見た目ではなく人数×一日量×日数で初めて見えます。
農林水産省と内閣府は、家庭で最低3日分、できれば1週間分の食料等を備えるよう案内しています。大規模災害では物流停止、店舗閉鎖、停電、断水、道路寸断が重なり、支援物資がすぐ全家庭へ届くとは限りません。だから七日分は贅沢な非常食ではなく、家庭が外部支援へつながるまでの時間を買う設備です。
4人家族が7日間に必要とする飲料・調理用水の目安は84リットルです。まず水量を計算すると、食料、トイレ、熱源、収納の現実的な不足が連鎖して見えます。
本記事は2026年9月5日に農林水産省の家庭備蓄ポータルと2026年特集、内閣府の防災チェックリスト、防災白書、首都直下地震対策資料を確認しました。必要量は健康状態、季節、住まい、地域災害、乳幼児・高齢者・ペットの有無で変わります。自治体のハザードマップ、避難情報、指定避難所、給水拠点を家庭の住所で確認してください。
在宅避難を選ぶ前に家が安全かを見る
備蓄量より先に、家から離れる危険条件を決めます。
在宅避難は、避難所へ行かず自宅で生活を続ける方法ですが、どの災害でも自宅に残る意味ではありません。建物の倒壊、火災、津波、河川氾濫、土砂災害、余震による落下物、ガス漏れが疑われるなら避難を優先します。備蓄が多いことは危険な家へ残る理由になりません。
地震では玄関や廊下が塞がれていないか、柱・壁に重大な損傷がないか、家具が再転倒しないかを確認します。水害では避難情報が出てから上階へ移れば安全と決めつけず、想定浸水深、流速、建物構造、孤立期間を読みます。住宅の水害リスク確認で災害種別ごとの退避先を決めます。
備蓄計画の前提は「安全な自宅で在宅避難できること」です。避難する条件と残る条件を家族で先に決め、物資の量が避難判断を遅らせないようにします。
水は飲む量と生活用水を分ける
3リットル目安と給水運搬を家族人数へ換算します。
1人1日約3リットルは飲料と調理を合わせた目安です。4人×7日で84リットルになり、2リットルペットボトル42本、6本入り7箱に相当します。乳児のミルク、服薬、夏の発汗、発熱時は余裕が必要です。持ち運べない量になるため、一か所へ積まず、寝室から出られない場合も取れるよう分散します。
トイレ洗浄、手洗い、食器洗い、清拭などの生活用水は別です。浴槽の残り湯は衛生状態と配管損傷を見て用途を限定し、飲料にしません。給水所から運ぶための折りたたみ容器や台車を用意し、満水時の重量を実際に持ちます。20リットル容器は水だけで約20キログラムです。
水道が復旧しても、集合住宅の受水槽、ポンプ、建物内配管が使えず各戸へ水が届かない場合があります。地域の復旧情報だけで蛇口が使えると判断せず、管理組合や管理会社の設備確認を待ちます。
食料はカロリーだけでなく調理条件で組む
停電・断水の日ごとに食べられる献立を作ります。
七日分をすべて非常食セットで揃える必要はありません。米、乾麺、缶詰、レトルト、即席スープ、常温保存の野菜・果物、栄養補助食品など普段食べるものを少し多く持ち、食べた分を補充するローリングストックを使います。賞味期限だけでなく、開封道具、加熱、水、食器が必要かを記録します。
停電した初日は冷蔵庫、次に冷凍庫、その後に常温品の順で使うと廃棄を減らせます。ただし室温、食品の状態、開閉回数で安全性が変わります。においだけで判断せず、傷みが疑われる食品は食べません。カセットコンロを使う場合は換気し、屋内で炭や発電機を使いません。
一人一日三食の献立を完璧に作るより、朝・昼・夜で食べられる組合せを七列に置きます。乳幼児、アレルギー、嚥下障害、糖尿病、腎疾患など配慮が必要な家族は、配給品で代替しにくい食品を優先します。
七日分は箱の数ではなく、家族が各日に食べられる組合せで確認します。配給で代替しにくい物から確保します。
食料備蓄の品質は品数ではなく、停電・断水の何日目に、誰が、どの熱源と水で食べられるかまで決まっていることです。
携帯トイレは水より先に不足を感じる
回数、設置、使用後保管を一組で準備します。
断水時に便器へ水を流すと、排水管の破損や集合住宅の使用制限によって逆流・漏水を起こすおそれがあります。管理者や自治体が安全を確認するまで、携帯トイレを便器へセットして使う方法を準備します。便袋、凝固剤、防臭袋、手袋、消毒、トイレットペーパーを一組で保管します。
必要回数は家族の排泄回数と日数で計算します。仮に一人一日5回なら4人7日で140回です。ただし体調や年齢で変わるため、家庭で一日記録して余裕を足します。商品表示の「50回分」を五日分と読まず、家族全員の回数へ換算します。
使用済み便袋の保管場所、可燃ごみとして出せる時期、自治体の分別を確認します。室内に置くなら防臭と子ども・ペットの接触防止が必要です。一度、手袋を着けて便器へ袋をセットし、凝固剤を使わず手順を練習します。
電気が止まると情報・暑さ・充電が同時に来る
電力を連絡、照明、医療へ配分します。
照明、スマートフォン、冷暖房、給湯、調理、集合住宅の給水ポンプ、オートロック、エレベーターが停電の影響を受けます。モバイルバッテリーの容量をmAhだけで比較せず、家族の端末を何回充電できるか、保管中に放電していないかを確認します。乾電池式ラジオと予備電池も置きます。
ポータブル電源を使うなら、定格出力、容量Wh、充電方法、使用機器の消費電力を確認します。医療機器を家庭で使う人は、一般的なバッテリーだけで安全を保証できません。主治医、機器事業者、電力会社、自治体の要援護者支援と個別計画を作ります。
充電器を持つだけでなく、誰の端末を何回充電し、情報取得と連絡へ何%残すかを決めます。
薬と衛生用品は配給を待てない
個人ごとの代替不能品を先に確保します。
処方薬、吸入器、インスリン、ストーマ用品、補聴器電池、コンタクト用品、生理用品、おむつ、粉ミルク、離乳食、介護食、アレルギー対応食は、一般配給で個人に合う物がすぐ届くとは限りません。薬は自己判断で余分に処方してもらうのではなく、主治医・薬剤師へ災害時の予備と保管温度を相談します。
お薬手帳は紙と電子の両方を検討し、薬名、用量、医療機関、薬局、アレルギーを家族が確認できるようにします。停電時にアプリを開けない可能性があるため、最新ページの写しを防水袋へ入れます。PHRサービスの選び方を使う場合も、クラウド接続できない場面を残します。
手洗い用水が少ないときは、石けん、手指消毒、ウェットティッシュ、使い捨て手袋を用途で分けます。食品用とトイレ処理用の手袋を同じ袋から使い回しません。歯磨き、入れ歯、口腔ケア用品も誤嚥性肺炎等の予防に関わります。
個別用品は「家族用」と一括表示せず、人の名前、使用量、代替不可日数、保管条件を書きます。避難所へ移る場合にそのまま持ち出せる袋へ分けます。
収納は一か所集中より被害分散を優先する
取出し不能と落下を避けて分散します。
玄関収納だけに備蓄すると玄関が塞がれたときに取れません。台所、寝室、二階、物置などへ分け、重い水は低い位置に置きます。家具の上へ箱を積むと地震で落下します。直射日光、高温、凍結、湿気を避け、製品の保管条件を守ります。
即時避難用の持出袋と、在宅避難用の七日備蓄は役割が違います。持出袋は背負って歩ける重量にし、身分証写し、薬、照明、通信、飲料、衛生用品など最初の一日を優先します。在宅用は重い水、調理器具、交換用品を含めます。
車内備蓄は温度上昇と浸水・車両損傷のリスクがあります。ペットボトル、電池、薬などの保管適否を確認し、車だけに全備蓄を置きません。家庭用蓄電池の選び方を検討する場合も、蓄電容量だけで水・食料の不足は解決しないと分けます。
ローリングストックは月一回の消費で回す
食べ慣れた食品を期限切れにせず循環させます。
備蓄を年一回点検すると、期限切れが同じ月に集中します。毎月一日を「一食使って一食買う日」にし、賞味期限が近い物を家庭の食卓で試します。子どもや高齢者が実際に食べるか、開封しやすいか、食後に水を多く必要としないかも分かります。
管理表には品名、数量、期限、保管場所、必要な人、買い足し単位を記します。バーコードアプリを導入して入力が止まるより、冷蔵庫に貼った一枚で家族が更新できる方が続く家庭もあります。方法の高度さではなく、欠品が見つかる頻度で選びます。
ローリングストックの目的は期限管理ではなく、災害時に家族が食べ慣れ、調理でき、補充場所を知っている状態を保つことです。
七日分を一度に買えない家庭の順序
3日から7日へ費用と収納を分けて伸ばします。
最初の週に一人3日分の水と携帯トイレを確保し、次に家族全員の3日分へ広げます。その後、食料、照明・通信、薬・個別用品を七日へ伸ばします。家計負担を抑えるなら、普段の買い物で缶詰一つ、水一本、電池一組を追加し、期限が分散するようにします。
収納が小さいなら、必要量を減らすのではなく、床下・屋外など不適切な場所を避けながら分散し、親族宅や職場備蓄との役割を確認します。地域の給水拠点や避難所に物資があるとしても、開設時期、配布量、受取りに並べる人が必要です。
家族会議では、集合場所、連絡方法、避難先、安否確認、ペット同行、近隣支援を決めます。防災DXの進め方とは家庭側の責任を切り分け、会社や行政の備蓄を家庭七日分へ数えません。
乳幼児がいる家庭では、液体ミルクや粉ミルクの使用条件、哺乳瓶の洗浄、使い捨てカップ、離乳食、おむつ、母子健康手帳の写しを確認します。普段は母乳中心でも、避難による体調変化を考え、自治体の乳幼児支援拠点を調べます。子どもの成長で必要量とサイズが変わるため、半年ごとに入れ替えます。
高齢者がいる家庭では、常食だけでなく、やわらかさ、水分、とろみ、義歯、補聴器、歩行器、排泄介助を見ます。エレベーター停止時に階段で移動できるか、在宅酸素や電動ベッドが停電時にどうなるかをケアマネジャーや事業者と確認します。家族だけで運べない場合の連絡先を紙で残します。
ペット用の水と食料、薬、トイレ、ケージ、鑑札、ワクチン記録も人用と別に計算します。同行避難は避難所で同室できる意味とは限りません。自治体の受入条件、ケージ寸法、飼主が持参する物を確認し、吠えや排泄への日常訓練を続けます。
現金は停電でキャッシュレス決済やATMが使えない場面に備え、小額紙幣と硬貨を含めて安全に保管します。身分証、保険情報、連絡先、家屋・家財の写真は、防水した紙と安全な電子控えへ分けます。避難中に個人情報が見える袋へまとめず、紛失時の連絡先を控えます。
備蓄の費用は最初の購入額だけでなく、期限切れ廃棄、電池交換、薬・おむつの更新、保管家具まで含みます。普段使う食品を循環させれば廃棄を減らせますが、携帯トイレやライトは使わないまま劣化するため、訓練で一部を開封し、同じ商品を補充します。
購入日と点検日を外箱へ大きく書けば、家族の誰でも次の交換時期を判断できます。
年二回は「停電した夜」を再現する
購入済みの物を実際の生活工程で試します。
机上の在庫確認だけでは、暗闇で物が取れるか分かりません。ブレーカーを操作せず、安全な範囲で照明を消し、懐中電灯、携帯トイレ、ラジオ、連絡先、食事一回を使います。カセットコンロは換気と火災予防を守り、燃料の装着方法を確認します。
訓練後は、水を運べなかった、缶切りがなかった、子どもが食べなかった、充電ケーブルが合わなかった、眼鏡が見つからなかったなど、具体的な失敗だけを直します。豪華な防災セットを買い直す前に、生活の一工程がつながるかを見ます。
家庭備蓄の完成は七日分を購入した日ではありません。安全な家で、家族が水・トイレ・食事・情報・薬を一晩実際に回せた日です。
参考情報
最低3日・推奨1週間と水量を裏付ける国の資料です。
以下は2026年9月5日に内容と到達性を確認した農林水産省・内閣府の一次情報です。
よくある質問
気になる質問を開くと、本文の重要点を短く確認できます。
Q水は家族4人で7日分なら何リットルですか?
A飲料・調理用を1人1日約3リットルで計算すると84リットルです。生活用水は別に考え、給水容器と運搬方法も準備します。
Q備蓄があれば避難指示でも家に残れますか?
A残りません。津波、洪水、土砂災害、火災、倒壊等の危険がある場合は避難を優先します。在宅避難は安全が確認できた住まいで行います。
Q非常食は専用品を7日分買う必要がありますか?
A普段食べる常温食品を多めに持ち、使った分を補充する方法でも備えられます。加熱、水、開封道具、食事制限まで含めて日別に組みます。
Q断水時に浴槽の水をトイレへ流してよいですか?
A排水管が破損している場合や集合住宅で使用制限がある場合は逆流・漏水の危険があります。安全確認まで携帯トイレを使い、管理者・自治体の案内に従います。
Q携帯トイレは何回分必要ですか?
A家族の一日排泄回数を実測し、人数と7日を掛けて余裕を足します。仮に一人一日5回なら4人7日で140回です。
Qカセットコンロや発電機を室内で使えますか?
Aカセットコンロは製品説明に従って換気と火災対策を行います。発電機や炭は一酸化炭素中毒の危険があるため、屋内や換気の不十分な場所で使いません。
Q薬は一週間分余計にもらえばよいですか?
A自己判断で増やさず、主治医・薬剤師へ災害時の予備、保管温度、停電時対応を相談します。薬名・用量・連絡先の紙の記録も用意します。