2026年7月1日、民間企業の障害者法定雇用率は2.5%から2.7%へ上がりました。障害者雇用状況の報告義務が生じる企業規模も、常用雇用労働者40.0人以上から37.5人以上へ広がっています。「40人未満だから対象外」と考えていた会社も、人数の定義を確認し直す時期です。
計算だけなら、対象となる常用雇用労働者数へ2.7%を掛けます。しかし、端数の扱い、短時間労働者、重度障害者のダブルカウント、特定短時間労働者、業種別の除外率があるため、給与台帳の在籍人数へ一律に掛けても正しい必要人数にはなりません。さらに、法定人数を満たした瞬間が雇用の完成でもありません。
2026年対応の分かれ目は、採用予定人数ではなく、毎年6月1日の算定表と、入社後に働き続けられる職務・配慮・相談経路を同じ責任者が管理できるかです。
本記事は2026年9月8日に、厚生労働省の障害者雇用率制度、2025年障害者雇用状況集計、労働局の事業主向け案内、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の納付金制度とQ&Aを確認しました。個別の算定、除外率、納付金、助成金は事業所の状況で変わるため、所轄ハローワークと最新様式で確定してください。
2.7%は37人に一人という意味ではない
在籍頭数ではなく、常用雇用労働者の算定値から対象と必要人数を求めます。
2.7%の逆数は約37.04ですが、制度案内の対象範囲は37.5人以上です。ここでいう人数は単純な社員名簿の人数ではなく、常用雇用労働者の算定値です。正社員だけでなく、期間の定めがあっても反復更新される人などが含まれ、週所定労働時間によって一人または0.5人として数える区分があります。
必要な障害者数は、事業主全体の算定基礎となる労働者数へ法定雇用率を掛け、法令上の端数処理で求めます。複数店舗や支店を持つ会社が、各拠点を別会社のように計算するわけではありません。本社人事は事業所別の勤務実態を集めた上で、法人単位の報告へ束ねます。
例えば、対象労働者の算定値が100人なら、2.7人をそのまま「3人採用」と読まず、法定雇用障害者数の端数処理を適用します。すでに在籍する対象障害者も、週所定労働時間や重度区分で算定値が変わります。採用計画は、分母と分子の双方を個人別根拠から再現して初めて人数へ落とせます。
37.5人は会社に在籍する頭数の目安ではありません。雇用契約、更新見込み、週所定労働時間を確認した「算定基礎となる労働者」の値で対象かを判定します。
短時間勤務は0.5人と決めつけない
労働時間、障害区分、重度区分ごとの制度上の数え方を切り分けます。
障害者側の算定では、週所定労働時間30時間以上、20時間以上30時間未満、10時間以上20時間未満で扱いが分かれます。重度身体障害者、重度知的障害者は一定の区分で二人分として扱われる一方、短時間では別の数え方になります。精神障害者の短時間勤務にも特例があり、障害種別だけで一律に0.5人とは置けません。
2024年4月からは、週10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者を0.5人として算定できる制度が始まっています。働く時間を雇用率のためだけに不自然に増減するのではなく、本人の体調、通院、集中できる時間、業務の連続性を踏まえて契約し、その結果を制度上正しく数えます。
手帳の有効性や対象区分を人事が口頭情報だけで判断する運用も避けます。本人のプライバシーへ配慮し、利用目的、確認担当、保管場所、更新時の連絡方法を限定します。現場の上司へは診断名を広く伝えるのではなく、安全と仕事に必要な配慮事項を本人と合意して共有します。
算定上の0.5人や2人は、本人の価値や仕事量を示す数字ではありません。法定雇用率の報告区分と、職務・評価・賃金の設計を混同しません。
2025年実績は雇用者数過去最高でも達成企業46.0%
全国の増加と自社の達成可能性を同じ数字として扱いません。
厚生労働省の2025年6月1日集計では、民間企業で雇用される障害者は70万4,610.0人、実雇用率は2.41%で、いずれも過去最高水準です。一方、当時の法定雇用率2.5%を達成した企業の割合は46.0%でした。全体の雇用人数が増えていても、半数を超える対象企業が法定率へ届いていないという同じ統計の二面があります。
2.7%への引上げで不足が生じる企業は、求人票を出す会社と、転職を考える当事者が同じ時期に増えます。募集開始を施行直前まで待つと、仕事内容を曖昧なまま選考し、入社後に「頼める仕事がない」となる危険が上がります。採用人数の予算だけでなく、受入部署の工数、支援機関との連携、設備変更、指導者の時間を年度計画へ入れます。
数字を取締役会へ報告する際は、法定人数、算定人数、不足だけを一枚にしません。応募、選考、入社、三か月・一年定着、職務拡大、本人希望、休職、離職理由を段階別に示します。法定率を達成しても短期離職が続くなら、採用広報より職務と上司支援を直すべきだと分かります。
「雇用者数は過去最高」と「自社が2.7%を安定して満たせる」は別の判断です。自社の不足だけでなく、採用後一年までの定着を同じ計画へ入れます。
除外率は対象外の免許ではなく分母の調整
該当事業と最新の率を事業所別に確認し、職務探索は続けます。
障害者の就業が一般に困難と認められてきた一部業種には除外率制度があります。2025年4月に各除外率設定業種の率が10ポイント引き下げられました。除外率がある会社でも雇用義務そのものが消えるわけではなく、対象労働者数へ定められた率を適用して算定基礎を調整します。
本社が複数事業を営む場合、会社名や大分類だけで最大の除外率を全員へ当てません。どの事業所のどの事業が該当し、何人を基礎にし、2025年の引下げを反映したかを記録します。前年度ファイルを複製して率だけ更新すると、組織再編や事業内容変更を見落とします。
除外率の存在を「この現場では働けない」という採用判断へ転用するのも誤りです。危険作業の本体を変更できない場合でも、工程設計、品質確認、調達、配車、データ入力、顧客連絡など周辺職務を検討できます。仕事を雑務の寄せ集めにせず、成果、責任範囲、習得段階、評価基準を持つ一つの職務として設計します。
納付金を払えば雇用しなくてよいわけではない
雇用義務と経済的負担を調整する制度の役割を分けます。
障害者雇用納付金制度は、障害者を雇用することで生じる経済的負担を事業主間で調整し、調整金や報奨金、助成金などへつなぐ仕組みです。一定規模以上の事業主が法定人数を下回る場合に納付金が生じますが、納付は雇用義務をお金で買い取る選択肢ではありません。
予算表では、納付金見込額と採用費を天秤にかけるだけでは足りません。設備改修、支援機器、手話通訳、通勤支援、職場介助、外部ジョブコーチ、上司の指導時間など、雇用を継続する費用を洗い出します。利用できる助成制度があっても、支給決定前に契約・発注すると対象外になる場合があるため、計画段階でJEEDやハローワークへ確認します。
50人規模の会社と5,000人規模の会社では、適用される納付金制度、組織内の配置余地、採用チャネルが違います。グループ会社で特例認定を検討する場合も、形式的に人数を移すのではなく、雇用管理、人事権、職務、支援体制の実態を制度要件と照合します。
納付金は不足人数を正当化する罰金でも、雇用しない権利の購入費でもありません。雇用義務と、事業主間の経済的負担調整は別の制度目的です。
求人票より先に一日の仕事を観察する
職種名ではなく工程、成果、環境、質問先を具体化します。
「軽作業」「事務補助」とだけ書いた求人は、応募者にも配属先にも仕事の実像を伝えません。受入部署で一日の流れを観察し、作業量が何時に発生するか、締切は何か、判断が必要な箇所はどこか、誰へ質問できるかを記録します。定型作業だけを切り出して繁閑差を無視すると、閑散日に仕事が消えます。
職務候補は、必須作業、訓練で習得できる作業、支援があればできる作業、代替すべき作業へ分けます。本人の障害種別から能力を推測せず、選考時に業務サンプル、勤務時間、騒音、移動、読み書き、対人接点を具体的に説明します。合理的配慮の申出を選考上のマイナスとして扱わない採点手順も必要です。
スキルベース採用の進め方で使う職務要件の分解は、障害者採用にも役立ちます。ただし、全員に同じ実技課題を課すことが公平とは限りません。必要な能力は同じでも、読み上げ、時間延長、回答方法の変更など、能力を測るための手段は調整できます。
抽象的な職種名ではなく、一日の工程、判断、環境、質問先まで観察して求人へ落とします。
合理的配慮を特別扱いではなく仕事の条件へする
本人との対話から実行可能な変更と見直し方法を合意します。
合理的配慮は、本人から申出があったときに対話し、障壁を取り除くための変更を検討するものです。すべての希望を無条件に受け入れる意味でも、診断名ごとの定型メニューを渡す意味でもありません。職務の本質、安全、本人の希望、会社の負担、代替案を具体的に話します。
例えば、指示を口頭だけで受けると混乱しやすい人には、優先順位と完了条件を短い文章で渡します。感覚過敏がある人には席、照明、騒音、休憩場所を調整します。通院がある人には始業時刻や休暇単位を検討します。同じ障害名でも必要な配慮は違うため、本人が仕事で困る場面から決めます。
配慮内容は、本人、直属上司、人事の三者で「誰が、いつ、何をするか」まで合意します。上司の善意に任せると異動時に消えます。緊急時の連絡、体調変化時の対応、情報共有の範囲、見直し時期も記録し、本人の同意なしに医療情報を広げません。
配慮の質は項目数では測れません。本人が担当業務の成果を出せるか、上司が実行できるか、異動後も合意が引き継がれるかで検証します。
雇用率と定着率を同じ会議で見る
基準日の人数だけでなく、一年後まで働ける条件を追います。
法定雇用率は基準日時点の制度指標であり、職場の質を単独で表す指標ではありません。入社後一か月、三か月、半年、一年で、仕事内容、勤務、配慮、上司との関係、評価、賃金、キャリア希望を本人と確認します。面談回数を成果にせず、困り事が解消したかを記録します。
離職が起きた場合は「本人都合」で閉じず、求人説明と実際の差、配慮の不履行、業務量、評価、職場の言動、通勤、支援機関との連携を振り返ります。個人が特定される小さな集団の数値は公開せず、人事と経営が改善に使える粒度で集計します。
ピープルアナリティクス導入の考え方を使うなら、障害の有無を単純な説明変数として人事評価へ流用しません。利用目的、アクセス権、少数集団の秘匿、本人への説明を先に決め、採用数と離職率だけで因果を断定しない運用にします。
外部支援は、紹介会社だけでなく、ハローワーク、地域障害者職業センター、就労移行支援、医療・生活支援など役割が異なります。本人の同意を前提に、就業上の相談と生活・医療情報の境界を守り、問題が起きる前から連絡経路を作ります。
人数報告と定着レビューを切り離さず、配慮が実行されたかを仕事の結果と一緒に見ます。
90日前から分母・職務・採用を並行する
算定、職務設計、受入訓練を順番待ちにせず進めます。
最初の30日で、事業所別の常用雇用労働者、短時間区分、除外率、在籍する対象障害者の算定根拠を再計算します。翌年度の採用、退職、週所定労働時間変更も入れ、6月1日と施行後の見込みを月別にします。数字が合わない場合は、給与、人事、勤怠のどの定義が違うかを特定します。
次の30日で、各部署から「頼みたい雑務」を集めるのではなく、継続して価値があり、教育と評価ができる職務を観察します。同時に、設備、情報、通勤、勤務時間、コミュニケーションの障壁を洗い出し、一般的な改善と個別配慮へ分けます。外国人材の育成と定着と同じく、採用数より入社後の説明と上司支援に工数を置きます。
最後の30日で、募集、選考時配慮、配属、初日、研修、相談、緊急時、三か月レビューを通しで模擬します。採用担当だけでなく、現場上司、同僚、IT、総務、産業保健、支援機関が自分の役割を説明できるかを確認します。
経営へは「あと何人」という一行ではなく、算定根拠、不足見込み、採用経路、職務数、受入可能日、配慮予算、定着リスクを出します。期限前の駆け込み採用を避け、本人と現場の双方が選べる時間を確保します。
参考情報
雇用率、実績、納付金、事業主支援を支える公式資料です。
以下は2026年9月8日に内容と到達性を確認した一次情報です。
よくある質問
気になる質問を開くと、本文の重要点を短く確認できます。
Q従業員が37人なら障害者を一人雇用する義務がありますか?
A単純な在籍人数では判定できません。常用雇用労働者と短時間労働者を制度上の方法で数え、2026年7月以降は算定値37.5人以上かを確認します。
Q法定雇用率2.7%なら100人の会社は必ず3人必要ですか?
A必要人数には法令上の端数処理があり、分母には短時間区分や除外率が影響します。在籍する対象障害者も区分により数え方が変わるため、個別の算定表で確定します。
Q障害者雇用納付金を払えば採用しなくてもよいですか?
Aいいえ。納付金制度は雇用義務を免除する仕組みではなく、障害者雇用に伴う事業主間の経済的負担を調整する制度です。
Q週10時間の勤務でも雇用率へ算定できますか?
A2024年4月から、週10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者は一定条件で0.5人として算定されます。対象区分と契約時間を確認します。
Q合理的配慮は全社員へ同じメニューを用意すれば足りますか?
A足りません。仕事で生じる障壁と本人の希望は個別に異なります。職務の本質、安全、実行可能性を対話し、担当者、実施方法、見直し時期を合意します。
Q障害者雇用率を達成すれば人事の対応は完了ですか?
A完了ではありません。採用後の職務、配慮、評価、相談、定着を追い、離職が続く場合は求人と現場運用を見直します。