欠員を急いで埋めたいとき、人材派遣と人材紹介は同じ候補に見えます。しかし、両者は「人を探してもらうサービス」という点以外、契約関係が大きく違います。派遣では派遣会社が労働者を雇用したまま派遣先が仕事を指示し、人材紹介では紹介会社が採用を仲介した後、採用企業が本人と雇用契約を結びます。
判断の起点は、一時的な業務遂行が必要なのか、自社の組織を担う人を採用したいのかです。応募数や一人当たりの請求額だけでなく、雇用責任、受入れ工数、配置期間、採用後の定着まで比べます。本記事は契約・雇用・料金の違いに絞り、採用要件や選考体験全体の改善は採用がうまくいかない原因の整理で扱います。
法令・制度は2026年8月4日に厚生労働省の公開情報で確認しています。派遣可能期間、禁止業務、許可条件には例外や個別要件があります。実際の契約は都道府県労働局、社会保険労務士、弁護士などへ確認してください。
契約関係を図にすると違いが分かる
人材派遣は雇用と指揮命令が分かれる
派遣労働者と雇用契約を結び、賃金を支払うのは派遣元です。派遣先企業は派遣元と労働者派遣契約を結び、契約で定めた業務の範囲内で派遣労働者へ指揮命令を行います。勤怠連絡、安全衛生、ハラスメント相談などは派遣元・派遣先の役割分担を契約と受入れ手順で明確にします。
派遣元(雇用・賃金)→派遣労働者←派遣先(就業場所・業務指示)という三者関係です。派遣料金は労働者本人の賃金と同じではなく、賃金、社会保険、教育、有給休暇、募集・管理費、派遣元の事業運営費などを含む請求です。
人材紹介は採用成立を仲介する
紹介会社は求人企業と求職者を仲介します。選考中は求人条件の提示、候補者推薦、面接調整、条件交渉などを支援し、入社時点では採用企業と本人が雇用契約を結びます。入社後の指揮命令、評価、賃金支払、育成は採用企業の責任です。
紹介会社(仲介)→採用企業と求職者が直接雇用契約という関係です。成功報酬型では採用決定や入社を基準に手数料が生じる契約が一般的ですが、料率、最低手数料、返戻金、対象となる想定年収は事業者ごとに異なります。厚生労働省の人材サービス総合サイトで、許可・届出事業者や手数料等の情報を確認できます。
人材紹介では採用企業が候補者を選考し、採用後は本人と直接雇用契約を結びます。写真:Alan Cleaver / CC BY 2.0(縮小・JPEG化)
面接できるかはサービスで異なる
通常の労働者派遣では、派遣先が就業開始前に面接を求めたり、履歴書送付を要請したりして派遣労働者を特定する行為は、紹介予定派遣の場合を除き禁止されています。本人が自ら希望して行う職場訪問等まで一律に禁じる趣旨ではありませんが、派遣先から選別のために求めない運用が必要です。
人材紹介では採用企業が自ら雇用するため、求人条件に基づいて書類選考や面接を行います。ただし年齢、性別、障害などによる不適切な差別を避け、仕事に必要な能力と条件で公正に選考することは両者に共通します。
紹介予定派遣は、最長6か月の派遣期間中に双方が直接雇用を検討し、職業紹介につなげる仕組みです。通常派遣と異なり、開始前の面接や履歴書の受領が可能です。ただし派遣を経れば必ず採用・就職できる制度ではなく、直接雇用に至らない場合の理由明示など独自のルールがあります。
料金を同じ時間軸で置き直す
派遣は稼働時間に応じた月次請求、人材紹介は採用時の一時費用になりやすいため、単月だけを比べると判断を誤ります。必要期間、採用・教育工数、欠員リスク、契約終了後に人材が残るかを同じ期間で比較します。
たとえば架空の計算例で、派遣料金を1時間2,800円、月160時間、6か月利用とすると請求額は月44万8,000円、6か月で268万8,000円です。これは市場相場ではなく、時間外、交通費、契約更新、業務内容で変わります。派遣労働者の賃金額を示す数字でもありません。
人材紹介は、仮に想定年収500万円、契約上の成功報酬率30%なら150万円です。これも架空例で、実際の料率や最低手数料は個別契約によります。短期離職時の返戻金は「何日以内なら何%」か、本人都合・会社都合・解雇で扱いがどう違うかを確認します。紹介料だけでなく、面接工数、入社までの空席期間、教育、定着支援を含めて比較します。
採用課題から逆算する四つのケース
月末の入力業務を3か月だけ補いたい
業務範囲を切り出せ、指揮命令者と期間が明確なら派遣が候補になります。受入れ前に操作権限、個人情報、引継ぎ、繁忙時間を決めます。恒常的な業務を短期契約で繰り返すだけになっていないかも見直します。
経験者を正社員として採用したい
長期的な配置、評価、育成を前提にするなら人材紹介が目的に合います。紹介会社へ職種名だけでなく、入社後90日の役割、意思決定の範囲、必要な経験と不要な経験を伝えます。自社で母集団を作る場合は求人媒体の選び方も比較対象です。
専門職をすぐ配置したいが採用判断もしたい
通常派遣、紹介予定派遣、直接採用のどれが制度上可能かを確認します。紹介予定派遣は採用前に実務上の相性を見られる一方、最長6か月、必ず採用ではない点を候補者にも明示します。
業務成果そのものを外部へ任せたい
作業する人へ自社が直接細かく指揮命令するなら派遣の性格があります。成果物や業務遂行を受託会社の管理下で任せる請負・業務委託とは区別し、契約名だけでなく実態を確認します。偽装請負を避けるため、現場の指示経路を人事と法務が点検します。
派遣期間と禁止業務の入口
派遣受入期間には事業所単位・個人単位の制限と例外があり、単純に「すべて3年」と覚えるのは危険です。また港湾運送、建設、警備、病院等の医療関係業務の一部など、労働者派遣が禁止される業務があります。職種名ではなく実際に従事する業務を、厚生労働省・労働局の最新資料で確認します。
契約途中で業務を広げると、当初の契約範囲や必要な技能とずれる場合があります。派遣先責任者、指揮命令者、苦情窓口を決め、更新前に仕事内容、残業、教育、安全配慮を派遣元と確認します。
受入れ初日に、担当業務・指揮命令者・情報権限・相談先を本人と派遣元を含めて確認します。
ミスマッチを減らす受入れ設計
派遣では、初日に作業手順を渡すだけでなく、判断が必要な場面、質問先、業務外の依頼を断る経路まで伝えます。一週間後に業務量と契約範囲、一か月後に習熟と安全面を確認し、本人だけに調整負担を寄せません。
人材紹介では、入社前に期待役割、評価基準、試用期間、働き方、上司との面談頻度を候補者と合わせます。早期離職が起きたときは返金条項だけで終わらせず、求人票、面接、受入れのどこで情報差が生まれたかを振り返ります。
事業者を選ぶ際は、候補者数より、許可・届出、専門領域、料金表と返戻条件、個人情報管理、苦情対応、担当者交代時の引継ぎを確認します。派遣ではマージン率など公開情報、人材紹介では手数料・返戻金制度の明示も比較材料です。
結論:期間ではなく雇用目的を先に決める
人材派遣は、派遣元が雇用し、派遣先が契約範囲で仕事を指示する仕組みです。人材紹介は、採用企業と求職者が直接雇用契約を結ぶための仲介です。短期だから必ず派遣、長期だから必ず紹介ではなく、誰が雇用責任を持ち、仕事終了後も組織に人材が必要かで判断します。
料金は月額と成功報酬をそのまま比べず、同じ期間の受入れ・採用・教育・空席・定着コストへ置き直します。面接の可否、派遣期間、禁止業務、紹介予定派遣の条件は、2026年8月時点の公式情報と個別契約で確認してください。
参考情報(2026年8月4日確認)
よくある質問
記事内でも触れている内容を、よくある質問の形でまとめました。検索やAI検索からの読者にも役立つよう、それぞれ独立して読めるように記述しています。
Q 派遣社員へ就業前の面接をしてもよいですか?
A 通常の労働者派遣では、派遣先が就業前面接や履歴書送付を求めて派遣労働者を特定する行為は原則禁止です。紹介予定派遣は扱いが異なります。
Q 派遣社員の雇用主は派遣先ですか?
A 雇用主は派遣元です。派遣先は労働者派遣契約の範囲で業務上の指揮命令を行います。賃金支払や雇用契約と、現場の業務指示を分けて理解します。
Q 紹介予定派遣なら必ず直接雇用されますか?
A 必ずではありません。最長6か月の派遣期間中に双方が直接雇用を検討する仕組みで、採用・入社を保証する制度ではありません。
Q 人材紹介の成功報酬率には全国共通の相場がありますか?
A 契約条件は事業者、職種、採用難易度で異なります。料率だけでなく、算定する年収の範囲、最低手数料、返戻条件、追加費用を手数料表と契約書で確認します。