「資産運用を始めたい」と考える人が増えている。低金利が長く続き、預金中心では資産が増えにくいと感じる層が広がってきたこと、そして2024年から始まった新NISAの拡充も後押しとなって、投資への関心は広がっている。

ただし、いざ始めようとすると「何から手をつけたらいいか分からない」という壁にぶつかる人が多い。証券会社、銀行、ロボアドバイザー、保険会社など、サービスを提供する事業者は多様で、商品も株式、投資信託、債券、ETFと種類が幅広い。情報は溢れているが、自分にとって筋の良い選択肢は見えにくい。

本記事では、資産運用を始めるにあたって整理しておきたい基本知識と、金融業界の主要プレイヤーをまとめる。なお、投資にはリスクが伴い、判断はすべて自己責任となる。本記事は情報の整理を目的としたものであり、特定の商品やサービスを推奨するものではない。

資産運用の前に整理しておきたいこと

商品選びの前に、自分自身の状況を整理しておくと、後の判断が楽になる。

目的を明確にする

何のために運用するのかを言語化する。老後資金、子どもの教育費、住宅購入の頭金、長期的な資産形成など、目的によって運用期間やリスクの取り方が変わってくる。

生活防衛資金を確保する

生活費の3〜6ヶ月分は、運用に回さず預貯金で持っておく、というのが基本的な考え方として広く知られている。突発的な支出や収入減少に備えるための「土台」になる。

運用期間を考える

短期(5年以内)、中期(5〜15年)、長期(15年以上)で、検討できる手段は変わってくる。一般に、運用期間が長いほど価格変動の影響を時間で吸収しやすいとされる。

リスク許容度を知る

価格変動にどの程度耐えられるかを把握しておく。たとえば、資産が一時的に30%下落しても運用を続けられるか、10%でも不安で売却したくなるか。年齢、収入、家族構成、性格によって変わってくる。

税制優遇制度を確認する

日本にはNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など、運用益が非課税になる制度がある。仕組みを理解した上で、自分の運用方針に合うかどうかを検討する流れになる。

金融業界の主要プレイヤー

株価チャートが表示されたPCの画面。
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資産運用に関わる金融機関は多様だ。代表的なプレイヤーを整理しておく。

証券会社

株式、投資信託、債券などの売買を仲介する。SBI証券、楽天証券、マネックス証券などのネット証券と、野村證券、大和証券といった対面型に大きく分かれる。ネット証券は手数料が低めの傾向で、自分で銘柄を選びたい層が利用しやすい。対面型は担当者と相談しながら進めたい層に向く。

銀行

普通預金、定期預金に加え、投資信託や保険商品の窓口販売も担う。ゆうちょ銀行、メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)、地方銀行、ネット銀行など多様な業態がある。普段の口座と同じ場所で完結する手軽さは魅力だが、商品ラインナップは証券会社より絞られる傾向にある。

ロボアドバイザー

アルゴリズムが資産配分と運用を自動で行うサービス。WealthNavi(ウェルスナビ)、THEO、楽ラップなどがこの領域を担う。質問への回答を元にポートフォリオが組まれる仕組みで、自分で銘柄を選ぶ知識が少なくても始めやすい設計だ。手数料は年率1%前後が一般的とされる。

保険会社

変額保険や外貨建て保険など、保険と運用を組み合わせた商品を提供する。日本生命、第一生命、ソニー生命、メットライフ生命などが大手だ。保険機能と資産形成を同時に扱えるが、商品設計が比較的複雑なため、内容を理解した上で検討することが大切になる。

信託銀行

資産管理、相続、不動産信託など、まとまった資産を持つ層向けのサービスを提供する。三菱UFJ信託、三井住友信託などが代表的だ。

各プレイヤーには得意分野がある。手軽に始めたい場合はネット証券、相談しながら進めたい場合は対面証券や銀行、自動運用型を検討するならロボアドバイザー、というように、自分の目的との相性で見比べる構図になる。

代表的な運用商品の種類

金融機関を選ぶ前に、商品の種類も押さえておくと判断材料になる。

株式

企業が発行する株式を購入する。値上がり益と配当が期待できる一方で、価格変動は大きく、企業業績や経済情勢の影響を受ける。

投資信託

複数の銘柄に分散投資された商品を、ひとつのパッケージで購入する仕組み。プロが運用を担う。少額から始めやすく、自然と分散投資になる。信託報酬と呼ばれる手数料が商品ごとに異なる。

ETF(上場投資信託)

投資信託の一種で、株式市場で売買できる商品。リアルタイムでの売買が可能で、信託報酬は一般的な投資信託より低めに設定されることが多い。

債券

国や企業が発行する借用証書にあたる。利息と元本の返済条件が決まっているため、株式より値動きは比較的穏やかになる。その分、期待されるリターンも控えめになるのが一般的だ。

NISA・iDeCoという「制度」

商品そのものではなく、運用益を非課税にする「制度」の名前である点に注意しておきたい。NISAは2024年に新制度に拡充された。iDeCoは老後資金のための制度で、税制上のメリットがある一方、原則として60歳まで引き出せない制約がある。

金融業界の今

スマートフォンに表示された株価チャート。
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資産運用を取り巻く環境は、ここ数年で大きく動いている。

新NISA制度の拡充

2024年から始まった新NISAでは、年間の投資枠が拡大され、非課税で保有できる期間が無期限化された。長期的な資産形成を税制面で後押しする設計になっている。

手数料の低下

ネット証券を中心に、株式売買手数料の引き下げや無料化が進んでいる。投資信託でも低コストのインデックスファンドが選択肢として広がり、コスト面のハードルは下がってきた。

ロボアドとフィンテック

自動運用、家計簿アプリとの連携、スマホで完結する取引など、フィンテック企業の台頭で運用の「入り口」は広がっている。

金融教育の広がり

2022年から高校の家庭科で資産形成が扱われるようになるなど、金融リテラシー教育の動きも広がっている。学校以外でも、書籍やオンライン講座など、学べる場の選択肢は増えてきた。

資産運用の第一歩

資産運用は、「自分の状況を整理する」ところから始まる。目的、運用期間、リスク許容度を確認した上で、自分に合った金融機関や商品を見比べていく。最初の一歩を踏み出せば、知識も少しずつ蓄積されていく。

業界比較図鑑では、他の業界 も中立的に整理している。資産運用を始める前に、業界の構造を知るところから始めてみてほしい。

最後にもう一度触れておきたい。投資にはリスクが伴い、判断はすべて自己責任となる。本記事は情報整理を目的としたものであり、特定の商品やサービスを推奨するものではない。実際の運用にあたっては、必要に応じて金融機関や専門家への相談も検討してほしい。