「単身赴任の荷物を運びたい」「ECで売れた商品を毎日発送したい」「大型家具1点だけ届けたい」「冷凍食品を全国に配送したい」「海外に小包を送りたい」。運送サービスは、暮らしの場面でも、事業の場面でも、登場の機会が広い領域だ。

ただ、ひとことで「運送」と言っても、その内訳は思いのほか広い。宅配便、引越、路線便、軽貨物、冷蔵輸送、国際輸送、マッチング型まで、得意領域も料金体系も大きく違っている。「とりあえず大手宅配で」と決め切ってしまう前に、運送業界の全体像を整理しておきたい。

ここでは、運送サービスを選びたい個人と、運ぶ事業者を見直したい事業者向けに、運送業界の主要プレイヤーと、検討時に知っておきたい項目を整理する。

運送サービスを依頼する前に整理しておきたいこと

「何を運ぶか」「いつ届くか」が決まっていないと、向く事業者は見えてこない。依頼の前に、いくつかの項目を整理しておきたい。

何を、どこからどこへ運ぶか

荷物の中身、サイズ、重量、個数、出発地と到着地。ここが明らかになると、宅配便で済むのか、トラック1台のチャーターが必要かなど、おおまかな選択肢が見えてくる。

いつまでに、どの頻度で

翌日着、当日着、時間指定、定期便、スポット便。求めるスピードと頻度で、向く事業者の構図は変わる。事業利用なら、年間の物量見込みも整理しておくと話が進めやすい。

取り扱い条件と特殊要件

冷蔵、冷凍、危険物、精密機器、美術品、生体、大型重量物、家具家電など、温度管理や取扱注意の条件は、事前の整理が欠かせない。条件次第で対応できる事業者が絞り込まれる。

予算と補償の考え方

運賃の予算感、荷物の評価額、万一の破損や紛失への補償の考え方。安く運びたいのか、確実に届けたいのか、優先順位を整理しておくと選びやすい。

運送業界の主要プレイヤー

高層ビル群を背に走り抜けるトラックや車両。
Photo by Huy Phan on Unsplash

運送事業者の業態は幅広い。代表的な8つの区分を整理する。

大手宅配便事業者

小口の荷物を全国に届ける宅配の中心。ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便(ゆうパック)が3大プレイヤーで、コンビニ持ち込み、再配達、追跡、時間指定など、一般利用者になじみのあるサービスを広く提供している。

引越専業事業者

家庭や個人の引越に特化した領域。アート引越センター、サカイ引越センター、アリさんマークの引越社、ハート引越センターなどがある。荷造り、家具設置、エアコン移設、ピアノ運送など、引越に伴う付帯サービスが特徴になる。

路線便、特積み事業者

事業者間の中型小型貨物を、定期路線で運ぶ事業者。西濃運輸(セイノー)、福山通運、トナミ運輸、第一貨物などが代表的だ。BtoBの物量、パレット単位、ロット便で活躍する領域だ。

一般トラック、チャーター便事業者

トラック1台を貸し切るチャーター便、一般貨物自動車運送事業者。大手にはセンコー、丸全昭和運輸、近物レックス、フットワークなどがある。中小事業者も全国に多数あり、地域密着、特定荷主の専属対応が強みになる。

軽貨物、即配事業者

軽自動車での個別配送、即配。赤帽、ロジクエスト、CBcloudなどが代表的だ。フードデリバリー、ECラストワンマイル、企業間スポット配送など、機動力が活きる場面で広がっている。

冷蔵冷凍、定温輸送事業者

温度管理を伴う食品、医薬品、化学品の輸送。冷凍冷蔵輸送の専門事業者(ニチレイロジグループ、ヨコレイ、SBSフリーズワン)、定温の3PL事業者などがいる。HACCPやGDP(医薬品の流通基準)に対応する事業者も多い。

国際輸送、国際宅配事業者

海外への小包、書類、貨物の国際輸送。フェデックス、DHL、UPS、TNTなどの国際宅配便、フォワーダー(郵船ロジスティクス、近鉄エクスプレス、日通)などがある。航空、海上、書類関税対応で違いが出る。

マッチング型、個人事業主

荷主とドライバー(または個人事業主)を直接結ぶマッチングプラットフォーム。CBcloud(PickGo)、ハコベル、Cariotなどがある。スポット運送、企業同士の急ぎ便、引越サポートなどで広がっている。

業態ごとに、得意な荷量、距離、スピード、料金体系が違う。「自分の依頼内容に向く業態」を見極めるところから始めたい。

依頼先を選ぶ際に知っておきたいこと

運送事業者を見比べる際に、押さえておきたい項目を整理する。

サイズ、重量、形状の制限

宅配便には、サイズ(縦横高さの合計)と重量の上限がある。大型家具、長尺物、重量物は、宅配の枠を超えるため、別の業態が向く。事前に制限を確認しておきたい。

配達日時の指定とリードタイム

翌日着、当日着、時間帯指定、土日着など、求める配達条件。エリアごとのリードタイムも、事業者で差が出る部分だ。

運賃の決まり方

サイズ、重量、距離、エリア、便種で運賃は決まる。事業利用なら、契約運賃、月次精算、燃料サーチャージなどの考え方も確認しておきたい。

追跡、配達証明、サインの取り扱い

荷物追跡の細かさ、配達完了通知、受領サイン、対面受取の有無。事業者で標準仕様が違う。

保険、補償の範囲

標準の運送保険、上限額、補償対象になる事故の範囲、貴重品や精密機器の取り扱い、追加保険の選択肢。荷物の評価額と照らして整理しておきたい。

運送業界の今

橋下を走る列車と隣接する高層ビル。
Photo by Jonas Gerlach on Unsplash

運送業界は、いま大きな構造変化の中にある。

2024年問題とドライバーの労働時間規制

2024年度から、トラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用された。長距離輸送のリードタイム延長、運賃の上昇、共同配送の広がりなど、業界全体で対応が進んでいる状況だ。

ラストワンマイルの再設計

ECの広がりで、最終配送のラストワンマイルが負荷の集まりやすい場所になっている。置き配、コンビニ受け取り、宅配ボックス、PUDOステーションなど、再配達を減らす取り組みが進んでいる。

共同配送、モーダルシフト

複数の荷主が同じトラックや路線をシェアする共同配送、トラックから鉄道や船舶への切替(モーダルシフト)が、CO2削減と効率化の観点から広がってきた。

EV化、自動運転の動き

商用車のEV化、自動運転トラックの実証、配送ロボット、ドローン配送など、車両周りのテクノロジー投資が進む。コストとエネルギーの両面で、業界全体に影響が出はじめている。

運送サービス選びの第一歩

運送サービスの依頼は、「何を、いつまでに、どこへ、どの条件で運ぶかを整理する」ところから始まる。それが整理できれば、向く業態と事業者は絞り込みやすい。

業界比較図鑑では、他の業界 も中立的に整理している。運送サービス選びの第一歩として、業界の構造を知るところから始めてみてほしい。