「自宅にホームセキュリティを導入したい」「店舗の防犯対策を強化したい」「イベントで人員配置をしたい」「工事現場の交通誘導を依頼したい」。警備サービスは、個人の安心から法人の事業運営まで、幅広い場面で活用される。

警備業界は法律(警備業法)で業務範囲が定められており、1号警備(施設警備)、2号警備(交通誘導と雑踏)、3号警備(輸送)、4号警備(身辺警備)の4区分がある。同じ「警備」でも、対象、手法、必要な資格は大きく違ってくる。

本記事では、警備サービスを依頼する際に整理しておきたい基本知識と、警備業界の主要なプレイヤーや業界の動向をまとめる。依頼を検討する人にとって、立ち止まって考えるための地図として活用してほしい。

依頼前に整理しておきたいこと

事業者を比べる前に、自分の状況を整理しておくと、後の判断が楽になる。

守りたいものと範囲

人(社員、来客、家族)、財産(現金、商品、データ)、施設(建物、設備)、情報(機密、個人情報)など、何を守りたいかを明確にしておきたい。範囲(1施設か、複数拠点か、エリア全体か)も整理しておく。

想定リスクと求める対応

不審者侵入、盗難、火災、設備故障、災害、トラブル対応、群衆整理、交通誘導など、想定リスクによって、向く警備区分は変わってくる。

24時間体制かスポットか

24時間常駐、夜間のみ、機械警備(センサーと駆けつけの組み合わせ)、スポット(イベントや工事期間限定)など、利用時間帯と方式が判断軸になる。

予算と契約期間

月額固定、時間制、案件単位、長期契約割引など、料金体系は事業者で多様だ。1年や3年の長期契約で割引になるケースも多い。

ITとの連携

監視カメラ、入退室管理、AI画像解析、IoTセンサー、スマートフォンアプリ連動など、警備と情報システムの統合の度合いも、確認しておきたい。

警備業界の主な業務区分と主要プレイヤー

三脚に固定された白と黒の監視カメラ。
Photo by Michał Jakubowski on Unsplash

警備業務は、警備業法で4つの区分に分かれている。

1号警備(施設警備)

建物や施設内の警備。オフィスビル、商業施設、工場、病院、学校、駐車場、データセンター、住宅などが対象になる。常駐警備、機械警備(センサー異常時の駆けつけ)、巡回警備などが含まれる。

2号警備(交通誘導、雑踏警備)

工事現場や駐車場、イベント会場での交通誘導や群衆の整理。建設現場、道路工事、駐車場の入出庫、イベント、コンサート、スポーツ大会などで活用される。

3号警備(輸送警備)

現金、貴金属、美術品、危険物などの貴重品輸送。ATM補充、銀行間輸送、デパート売上金の回収などが代表例だ。

4号警備(身辺警備)

人物の身辺護衛(いわゆるボディガード)。政治家、芸能人、要人、ストーカー被害の対象者などへの身辺警護。高い専門性が求められる領域だ。

大手総合警備会社

複数区分を統合的に提供する大手。セコム、ALSOK(綜合警備保障)、セントラル警備保障(CSP)、東洋テック、関電SOSなどが代表的だ。機械警備、施設警備、輸送、ホームセキュリティまでを一貫して提供している。

中堅、地域警備会社

特定の地域や業務に特化した中堅事業者。コスト、フットワーク、地域密着の対応力が特徴になる。

ホームセキュリティ専業

個人住宅向けに機械警備サービスを提供する事業者。セコムのホームセキュリティ、ALSOKのHOME ALSOKなどが代表的だ。月額契約、センサー設置、異常時の駆けつけが基本のセットになる。

イベント警備、スポット警備

イベント、コンサート、スポーツ大会、選挙など、期間が限定されるスポット警備を専門とする事業者。短期契約や繁忙期対応が特徴になる領域だ。

警備の区分と、事業者の規模や特化領域で選ぶ構図になる。複数を組み合わせて使うケースも多い。

依頼先を選ぶ際に知っておきたいこと

警備サービスを見比べる際に押さえておきたい項目を整理する。

警備業の認定と教育体制

警備業は、都道府県公安委員会の認定が必要な業種だ。検定資格(施設警備業務検定、交通誘導警備業務検定など)を持つ警備員の配置や、新任教育、現任教育の体制も確認しておきたい。

機械警備と人的警備のバランス

機械警備(センサーと駆けつけ)は、コストを抑えやすく、24時間の対応が可能だ。人的警備(常駐警備員)は、柔軟な対応や、現場での存在感が特徴になる。両者の組み合わせで設計するケースが一般的だ。

駆けつけ拠点と対応時間

機械警備の場合、異常時に駆けつける拠点が近くにあるか、平均の対応時間はどれくらいかも確認しておきたい。

監視カメラとITの連携

監視カメラ、AI画像解析、入退室管理、勤怠管理、IoTセンサーなど、ITシステムとの統合度合い。クラウド管理が標準化しつつある領域でもある。

賠償責任と保険

警備上のトラブル(物損、盗難、傷害など)が発生した際の損害賠償、警備会社が加入している保険、契約上の責任分担を、契約書で確認しておきたい。

警備業界の今

ポールに取り付けられた白いセキュリティカメラ。
Photo by Pawel Czerwinski on Unsplash

警備業界は、ここ数年で大きな変化の中にある。

人手不足とロボット、AI活用

警備員の不足を背景に、警備ロボット、AI画像解析、ドローン警備、自動巡回機などのテクノロジー活用が広がっている。人とテクノロジーのハイブリッド型警備が広がっている状況だ。

機械警備の高度化

家庭向けのセンサー警備が、スマートフォンアプリと連動するなど、機能の幅が広がっている。シニア向けの見守りサービスと組み合わせる動きも進んでいる。

イベント警備と大型施設の需要

大型スポーツ大会、観光地、コンサートなどでの警備需要が広がっている。インバウンドの回復にあわせて、観光警備、テロ対策、群衆整理の重要性も高まってきた。

サイバーセキュリティとの融合

物理的な警備だけでなく、サイバー攻撃や情報セキュリティと統合した「総合セキュリティ」の考え方が広がっている。警備会社が情報セキュリティのサービスを提供する事例も増えている。

警備サービス選びの第一歩

警備サービスの依頼は、「守りたいものと運用方針を整理する」ところから始まる。対象、リスク、時間帯、予算、IT連携など、自分にとって重要な要素が明確になっていけば、向く事業者と警備区分は見えてきやすい。

業界比較図鑑では、他の業界 も中立的に整理している。警備サービス選びの第一歩として、業界の構造を知るところから始めてみてほしい。