住宅ローンの固定金利と変動金利は、「今の金利が低い方」を選ぶだけの比較ではありません。返済中に金利が変わる可能性を誰が負うか、返済額が増えたとき家計に余白があるか、手数料・保証料・団信まで含めた総費用がいくらかを考える選択です。
2026年1月の住宅金融支援機構調査では、2025年4月から9月に住宅ローンを利用した回答者の75.0%が変動型、14.9%が固定期間選択型でした。ただし利用割合は「多数が選んだ方式なら自分にも合う」という根拠ではありません。金利上昇を家計で吸収できるなら変動、返済額を確定する価値が高いなら全期間固定、一定期間の計画を優先するなら固定期間選択というように、家計の耐性から選びます。
本記事は金利タイプと返済シナリオに焦点を置き、金融機関のサービスや口座全般は銀行の選び方、物件・建築費を含む計画は家を建てる手順と役割を分けています。
制度・調査は2026年8月4日に公式情報で確認しました。以下は一般的な情報と架空モデルで、個別の借入れを勧めるものではありません。実際の適用金利、返済額ルール、審査、団信は金融機関・商品・契約で異なります。
三つの金利タイプで「確定する期間」が違う
全期間固定は完済までの金利を決める
借入時に完済までの金利が決まり、約定どおりなら毎月返済額を見通しやすい方式です。市場金利が上がっても契約金利は変わりません。一方、借入時の適用金利が変動より高い場合があり、市場金利が低下しても自動で下がりません。借換えには手数料や審査が伴います。
固定期間選択は期間終了後に選び直す
当初3年、5年、10年などを固定し、終了時に変動へ移る、または再度固定期間を選ぶ方式です。子どもの進学まで、共働き収入が安定するまでなど、一定期間の返済額を固めたい場合に使われます。終了後の優遇幅・適用金利・返済額上限がどうなるかを契約前に確認します。
変動は金利見直しの影響を受ける
一般に市場金利や金融機関の基準に応じて適用金利が見直されます。借入時の返済額を抑えやすい反面、上昇時には利息割合や返済額、総返済額が増えます。「金利が上がっても毎月返済額がすぐ変わらない」商品でも、利息が増え元金の減りが遅くなる可能性があります。
3,500万円・35年の金利シナリオ
比較のため、借入額3,500万円、35年、元利均等、ボーナス返済なしとします。事務手数料、保証料、団信上乗せ、税、繰上返済を含まない架空の単純計算で、実在商品の金利や将来予測ではありません。2026年8月4日に計算条件を固定しています。
| シナリオ |
金利の置き方 |
当初月返済 |
6年目以降の月返済 |
35年の返済総額 |
| A 全期間固定 |
2.0%を35年 |
約11万5,900円 |
同額 |
約4,870万円 |
| B 変動・緩やかに上昇 |
0.8%を5年、以後1.8% |
約9万5,600円 |
約11万0,000円 |
約4,533万円 |
| C 変動・大きく上昇 |
0.8%を5年、以後2.8% |
約9万5,600円 |
約12万5,600円 |
約5,097万円 |
このモデルでは、上昇後1.8%なら固定2.0%より総額が低く、2.8%なら高くなります。未来の金利がどこへ動くかを当てる表ではなく、月3万円増えても教育費・修繕費・老後資金を維持できるかを見る表です。実際の変動商品は金利見直し時期、返済額見直し、未払利息、最終回の扱いが異なります。
当初返済額だけでなく、金利上昇後の月額と総返済額を同じ借入条件で試算します。
5年ルール・125%ルールを過信しない
一部の金融機関の変動金利・元利均等返済では、金利が変わっても返済額を5年間据え置く「5年ルール」と、見直し後返済額を従来の125%までとする「125%ルール」があります。三菱UFJ銀行の公式FAQでは、元金均等返済にはこれらのルールがないと説明されています。
これは利息を免除する仕組みではありません。返済額が据え置かれても利息割合が増え、元金が予定より減らない場合があります。また、すべての金融機関・商品に共通する法律上の一律ルールではありません。自分の契約に適用されるか、最終返済時に残額がある場合の扱いまで商品説明書で確認します。
「審査金利」と「適用金利」も別です。審査金利は返済能力を審査する際に金融機関が内部で使う基準で、実際に契約へ適用される金利と一致するとは限りません。借りられる上限を、家計が返し続けられる額と考えないようにします。
金利以外の費用で比較が逆転する
事務手数料には定額型と借入額に連動する定率型があります。保証料は前払い・金利上乗せ・不要など商品で異なります。団体信用生命保険は基本保障が金利に含まれる場合と、疾病保障等で金利が上乗せされる場合があります。ほかに印紙、登記、火災・地震保険、繰上返済手数料、電子契約条件も確認します。
見積もりは「借入金利、毎月返済、手数料、保証料、団信上乗せ、完済までの総支払」を同じ表にします。固定と変動で団信内容が違うなら、保険価値もそろえなければ比較になりません。住宅価格と諸費用全体はマンション購入の判断ポイントなど物件側の記事と合わせて確認します。
家計の出来事から選ぶ
収入が一人分でも返せるか
共働き前提の借入れでは、育児、介護、病気、転職で一時的に収入が減る場面を試算します。固定の安心と変動の当初負担差を、片方の収入が減った状態で比較します。生活防衛資金を頭金へ入れ過ぎないことも重要です。
金利上昇分を毎月積み立てられるか
変動を選ぶなら、固定との差額を消費せず、繰上返済や緊急資金に回す設計があります。毎月の差額を積み立てられない家計は、当初金利の低さを余裕と誤認している可能性があります。
住み替え・売却の可能性はあるか
転勤や家族構成の変化で売却する場合、残債と売却価格の関係が重要です。金利タイプだけでなく、元金がどの速度で減るか、繰上返済条件、抵当権抹消等の費用も確認します。
返済表へ教育費、修繕、車の買替え、収入減少を重ねると、許容できる金利変動が見えます。
繰上返済・借換え・ミックスは出口まで見る
繰上返済には期間短縮型と返済額軽減型があります。利息軽減だけでなく、手元資金が減る影響を比べます。住宅ローン控除の適用条件や団信保障との関係もあるため、税務上の扱いを確認せず一律に急ぐものではありません。
借換えは金利差だけでなく、残高、残期間、事務手数料、保証料返戻、登記、団信の再加入・健康状態を含めて判断します。新たな審査があり、希望どおり借り換えられる保証はありません。
ミックスローンは固定と変動を組み合わせて上昇リスクを分散できますが、契約が複数になり手数料が増える場合があります。繰上返済をどちらへ充てるかも決めます。「半分ずつなら安全」とは限らず、家計が守りたい返済額を固定部分でどこまで確保するかを設計します。
申込前の最終チェック
同じ借入額・期間で、現在金利、1%上昇、2%上昇の返済表を金融機関ごとに作ります。次に手数料・保証料・団信を加え、返済負担率ではなく毎月の残余資金を確認します。契約書・商品説明書で金利見直し、返済額見直し、遅延、繰上返済、借換えの条件を読みます。
住宅ローンは最長数十年の契約です。ランキングの当月金利より、家計の変更に耐えるか、疑問を文書で説明してもらえるかが重要です。個別の税・相続・保障を含む判断は、金融機関だけでなく独立した専門家へ確認する選択肢もあります。
まとめ
固定と変動の違いは、将来の金利変動リスクを金融機関側に固定するか、借り手が引き受けるかにあります。全期間固定、固定期間選択、変動を、同じ借入額・期間・費用・団信条件で比べてください。
2026年8月時点の金利を将来へ延長せず、複数シナリオで月返済と総額を確認します。5年・125%ルールは商品ごとの差があり、返済負担を消す仕組みではありません。最終判断は自分の契約条件と家計表で行うことが重要です。
参考情報(2026年8月4日確認)
よくある質問
記事内でも触れている内容を、よくある質問の形でまとめました。検索やAI検索からの読者にも役立つよう、それぞれ独立して読めるように記述しています。
Q 変動金利は金利が上がるとすぐ返済額も上がりますか?
A 商品と返済方式によります。5年ルールを採る元利均等返済では返済額が一定期間据え置かれても、利息割合が増え元金の減りが遅くなる場合があります。
Q 5年ルール・125%ルールはどの住宅ローンにもありますか?
A 一律ではありません。金融機関、商品、元利均等・元金均等など返済方式で異なります。自分の契約の商品説明書で確認してください。
Q 固定金利なら繰上返済をしなくてよいですか?
A 固定・変動にかかわらず、手元資金、利息軽減、住宅ローン控除、教育費、団信保障を合わせて判断します。繰上返済が常に最優先とは限りません。
Q 審査に通った借入額なら無理なく返せますか?
A 審査上の借入可能額と、家計が返し続けられる額は別です。収入減少、教育費、修繕費、金利上昇を入れた家計表で確認します。
Q 借換えは金利差だけで決められますか?
A 残高・残期間・手数料・保証料・登記・団信再加入・審査を含めて比較します。健康状態等により同等の団信へ入れない可能性も確認します。