「カシューナッツ味」と書いた菓子だけを探せばよいわけではありません。カレーのコクを出すペースト、ドレッシングの複合原材料、製菓用ミックス、輸入ソースに含まれ、仕様書では英語名や原料コードだけで管理されている場合があります。表示切替の難所は、表面に見える商品名ではなく、原材料を一段ずつほどくことです。
2026年4月1日、カシューナッツは食品表示基準上の特定原材料へ追加されました。それまでの「表示を推奨する品目」から「容器包装された加工食品等で表示が義務となる品目」への移行です。カシューナッツについては2028年3月31日までの経過措置が置かれています。
法令上の切替日は2026年4月1日、カシューナッツの経過措置終了は2028年3月31日です。2028年4月に調査を始めるのではなく、その日までに適法な表示で製造・加工・輸入できる状態を作ります。
本記事は2026年9月5日に、消費者庁の食物アレルギー表示ページ、食品表示基準の改正概要、通知、Q&A、ハンドブック、アドバイザー会議議事録、食品表示基準を確認しました。個別製品の表示方法、製造所固有記号、添加物、業務用、量り売り、外食、輸入品、回収要否は所轄保健所、消費者庁資料、専門家へ確認してください。
最初に製造日と販売日を分ける
経過措置を製造、加工、輸入、販売の工程へ落とします。
経過措置を「2028年3月31日まで店頭で旧表示品を売れる」と単純化すると、製造計画を誤ります。食品表示の経過措置は、改正前表示を認める対象や起点を改正条文と通知で確認する必要があります。製造、加工、輸入、販売のどの日を管理するかを法務・品質保証と確定し、社内資料へ根拠の文言を残します。
製品台帳には製造日、賞味期限、最終出荷日、取引先在庫期間を置きます。賞味期限が24か月の商品は、包材切替後も旧表示の商品が長期間流通します。法的に販売できる期間と、消費者から見て誤解のない情報提供を分けて判断します。
切替日を一律にすると、短い賞味期限の商品は旧包材を大量廃棄し、長い賞味期限の商品は対応が遅れます。SKUごとに原料確定日、表示原稿確定日、資材発注日、初回製造日を決めます。食品期限表示の根拠を作る方法で賞味期限自体を変更する商品は、同じ版下変更として混ぜず、評価と承認を別案件にします。
商品名検索ではなく原料を三段階さかのぼる
配合表、仕入先規格、製造工程の順に確認します。
第一段階は自社配合表です。「カシューナッツ」「カシュー」「cashew」だけでなく、ナッツペースト、プラリネ、ミックスナッツ、カレーペースト、シーズニングなど複合原材料を抽出します。第二段階は仕入先規格書です。配合率が少ない副原料、キャリーオーバー、加工助剤の扱いも含め、最新改訂日と回答者を確認します。
第三段階は製造工程です。同じラインでカシューナッツを使うか、洗浄で除去できるか、粉末が飛散するか、再加工品が戻るかを見ます。意図して原材料として使う場合の表示と、意図しない混入への注意喚起は同じ根拠ではありません。「同じ工場で製造」の定型文を安全策として自動追加せず、混入防止策を実施しても除去できない可能性を工程評価で示します。
原料調査の完成条件は、全仕入先から回答が届くことではありません。全SKUについて「含有」「不使用」「未回答」「工程由来の可能性」を区別し、未回答品を製造判断から外せることです。
一括表示と個別表示を製品群で統一する
読みやすさと改版管理を両立する表示方式を選びます。
アレルギー表示には、個々の原材料名の直後へ括弧で示す個別表示と、原材料欄の末尾にまとめる一括表示があります。製品の情報量、複合原材料、消費者の読み取りやすさを踏まえ、どちらを使うかを決めます。同じブランド内で理由なく方式が混ざると、改版時の確認漏れが増えます。
一括表示では、既に原材料名から明らかな品目をどこまで再掲するか、表示欄全体のルールへ従います。カシューナッツだけ追加しても、他の特定原材料が欠けていれば合格ではありません。現在の特定原材料と準ずる品目の一覧を最新版へ置き換え、旧マスタとの差分を出します。
文字サイズ、背景との対比、表示可能面積も確認します。シールで追記する場合、既存表示や賞味期限、開封口へ重ねず、流通中に剥がれない方法を検証します。ECの商品画像や商品説明は容器包装の法定表示そのものではありませんが、旧画像が残ると問い合わせや誤購入につながるため、実物の切替ロットと同期します。
版下だけを確認せず、実際の容器形状、印刷位置、賞味期限欄との干渉まで現物で読みます。
旧包材を「使い切る」前に誤使用を止める
在庫金額だけでなく期限と誤投入を管理します。
経過措置があると、購買部門は旧包材を使い切る計画を立てます。しかし原料配合の変更、輸出先表示、取引先基準により、法定期限より早く切替が必要なSKUがあります。旧包材の在庫金額だけで順序を決めません。
倉庫では旧版と新版を物理的に分け、資材コード、版番号、色票、入庫日を識別します。製造指図は「包材A」の名称だけでなく版番号を指定し、ライン投入前と初品で照合します。余った旧版を別工場や委託先へ移す場合も、移動後の誤使用リスクを評価します。
包材廃棄を避けるための上貼りシールは、貼付工数、剥離、位置ずれ、読みやすさ、食品接触の有無を確認します。手貼り作業が1個10秒でも10万個なら約278時間です。単価だけでなく、人員、検品、再作業、出荷遅延を比較します。
旧包材残数、残り製造回数、賞味期限、法定期限、取引先期限を一表にすると、「廃棄が惜しいから使う」という感覚判断を止められます。
仕入先変更を表示変更のトリガーにする
原料の版が変わるたびに含有情報を再確認します。
同じ商品名のカレーペーストでも、製造国や工場が変わればカシューナッツの配合や共有設備が変わる可能性があります。初回調査で不使用と分かった原料を永久に白扱いにせず、仕入先、製造所、配合、原産国、規格書版の変更を再確認のトリガーへします。
購買部門が代替原料を緊急手配するとき、価格と納期だけで発注できない承認経路を置きます。品質保証がアレルゲン、添加物、原産地、栄養成分、認証を確認し、表示変更の有無を判定してから使用許可を出します。夜間や災害時の代替にも同じ最低項目を設けます。
仕入先への質問は「カシューナッツを含みますか」の一問で終えません。原材料としての使用、複合原材料内の使用、同一設備、洗浄、分析、今後の変更通知、回答対象ロットを分けます。秘密配合を理由に詳細比率を得られなくても、法定表示に必要な含有情報と証拠は契約で受け取ります。
検査は配合管理の代わりにしない
分析結果と原料・工程証拠の役割を分けます。
分析法が整備されたことは義務表示移行の背景の一つですが、最終製品を一度検査して陰性なら表示不要、とはなりません。サンプリングした場所とロットに検出されなかったことと、全ロットの原料配合を証明することは別です。
検査を使う場面は、洗浄妥当性、意図しない混入の調査、苦情原因の切り分けなどです。検出限界、対象タンパク質、加熱・発酵による影響、採取箇所、ロット内ばらつきを試験機関と確認します。結果は「合格」の一語で保存せず、試験法、検体、製造日時、判定者を残します。
製造記録では、カシューナッツ原料の受入、保管、計量、投入、ライン清掃、廃棄、再加工まで追跡します。食品トレーサビリティの設計を整えると、問い合わせや回収時に対象ロットを狭めやすくなります。
検査の陰性は「原料として入れていない」という設計の代替証拠ではありません。配合・仕入先・工程の記録を主証拠にし、分析は確認したい仮説へ限定します。
外食と包装済み加工食品を同じ義務範囲だと思わない
販売形態ごとに法的義務と情報提供を整理します。
容器包装された加工食品の表示義務と、飲食店で提供する料理の情報提供は法的な扱いが同一ではありません。外食に法定表示がない場面でも、アレルギーのある利用者にとって危険が小さくなるわけではありません。メニュー、店員回答、厨房の共有器具を別に整えます。
店員が「入っていないと思います」と記憶で答えないよう、レシピと仕入先規格から検索できるアレルゲン表を更新します。季節メニュー、店舗限定、代替食材、まかない転用を更新対象にします。完全除去を保証できない場合は、できることとできないことを具体的に説明します。
量り売り、店内製造、通信販売、業務用原料も販売形態により必要表示が変わります。自社の全商品を「小売包装」「業務用」「外食提供」「無包装」「輸出」に分け、同じデザインテンプレートで一括処理しません。
誤表示を見つけたときは健康危害から順に判断する
出荷停止、届出、回収をロット単位で判断します。
製造後にカシューナッツの表示漏れを見つけたら、在庫を止め、対象ロット、配合、出荷先、消費期限、購入者へ届く経路を確認します。ラベル修正で済むか、出荷先で販売停止するか、消費者へ告知し回収するかは、健康危害と法令に基づいて判断します。
食品等のリコール情報届出制度の対象となるか、行政への報告、取引先連絡、問い合わせ窓口を確認します。SNS投稿だけで告知を終えず、商品名、容量、JAN、賞味期限、ロット、返送方法を消費者が照合できる形にします。
回収後は「担当者の見落とし」で閉じません。仕入先規格の更新が商品マスタへ届かなかった、旧版下を委託先が使用した、原料コード検索に別名がなかったなど、工程の接続を直します。HACCP記録のデジタル化の逸脱記録と結び付け、再発防止策の有効性を次ロットで確認します。
2027年9月を社内の実務期限に置く
法定期限の半年前までに通常商品の移行を終えます。
法定の経過措置終了ぎりぎりに全SKUを切り替えると、包材印刷の再校正、仕入先未回答、繁忙期、設備停止が一件重なるだけで遅れます。残り半年を流通確認と例外処理へ使えるよう、2027年9月までに通常商品の新版初回製造を終える計画が現実的です。
最初の30日で商品・原料・包材の台帳を統合し、含有と未確認を抽出します。次の60日で仕入先回答と工程評価を集め、表示方式と注意喚起を決めます。その後は賞味期限が長い商品、輸入品、委託製造品、包材ロットが大きい商品から版下を確定します。
進捗率は「版下作成済みSKU数」だけでは足りません。原料証拠完了率、新版承認率、新版初回製造率、旧包材残数、旧表示流通残数、未回答仕入先数、EC画像同期率を週次で見ます。どれか一つでも未確認なら、100%完了と表示しません。
表示変更はデザイン業務ではなく、原料証拠から市場在庫までをつなぐ移行プロジェクトです。
完了判定は「新版データがある」ではなく、未確認原料が0、誤使用できる旧版が0、対象製造が新版へ移行し、取引先とECの情報まで一致した状態です。
表示切替後には、消費者相談窓口へ旧版と新版の現物を渡し、問い合わせ訓練を行います。「昨日買った商品に表示がない」「ナッツ不使用と書いてある」「ピスタチオも食べられない」といった質問に、ロット、製造日、原料、注意喚起の違いを確認して答えられるかを試します。担当者が商品名だけで安全を断定しない回答票を用意します。
営業資料、商品規格書、卸先データベース、学校・病院向け献立システムも同じ切替ロットへ合わせます。容器の表示が正しくても、取引先へ渡した古い規格書に「カシューナッツなし」と残れば、給食や病院食の判断を誤らせます。データ更新の受領確認までを出荷条件へ入れます。
最後に、旧版商品と新版商品のJANが同じ場合、倉庫やECで画像だけを見て区別できない問題を確認します。ロット照会手順を窓口へ置き、法的な経過措置中であっても、アレルギーのある消費者へ最新の含有情報を回答できる状態を保ちます。
包材切替の品質は印刷物ではなく、消費者が手元のロットを伝えたとき、担当者がその製品の原料証拠と表示状態へ数分で到達できるかで測ります。
この照会時間を月一回測り、担当交代後も同じ回答へ到達できることを確認します。回答できなかったSKUは出荷量に関係なく未完了へ戻します。
参考情報
施行日、経過措置、表示方法を支える公式資料です。
以下は2026年9月5日に内容と到達性を確認した一次情報です。
よくある質問
気になる質問を開くと、本文の重要点を短く確認できます。
Qカシューナッツ表示は2026年4月1日から直ちに必要ですか?
A同日に特定原材料へ追加されましたが、カシューナッツに関する経過措置は2028年3月31日までです。どの製造・加工・輸入品が措置対象になるかを改正概要と個別条件で確認し、期限前に新版へ移行します。
Q店頭の旧表示商品は2028年4月1日に全部撤去しますか?
A経過措置の法的な対象日と販売日の扱いを正確に確認する必要があります。賞味期限が長い商品は流通残が続くため、法的可否と消費者への分かりやすい情報提供を分けて判断します。
Q「本品製造工場ではカシューナッツを含む製品を製造」と書けば足りますか?
A注意喚起は、混入防止策を講じても混入可能性を排除できない場合に、工程評価に基づいて行います。意図して原材料として使うカシューナッツの義務表示を注意喚起文で代替できません。
Q検査でカシューナッツが出なければ表示不要ですか?
A単一検体の陰性だけでは全ロットの配合を証明できません。原料規格、配合、仕入先変更、工程記録を主証拠とし、検査は洗浄妥当性や混入調査など目的を定めて使います。
Q飲食店のメニューにも同じ表示義務がありますか?
A容器包装された加工食品と外食提供では法的扱いが同じではありません。ただし健康危害を避けるため、レシピと仕入先規格に基づくアレルゲン情報、変更管理、店員の回答方法を整えます。
Q輸入食品は誰が原料情報を確認しますか?
A国内で表示責任を負う食品関連事業者が、海外仕様書を日本の表示基準へ対応させます。英語の商品名だけで判断せず、複合原材料、製造所、共有設備、変更通知を輸入ロットと結び付けます。